令和3年第1回十和田市議会定例会(3月3日開会)において、小山田市長が令和3年度の施政方針を述べました。
※ 施政方針とは
市長の市政運営に対する基本的な考え方や主要な施策などについて述べたものです。
※ 本文書は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干変更があります。
令和3年第1回十和田市議会定例会の開会に当たり、所信の一端並びに市政運営の基本方針を申し述べます。
私は、去る1月24日に執行されました市長選挙において、引き続き、4期目の市政を担わせていただくこととなりました。
改めて、市長としての責務を重く受けとめ、本市の更なる発展と諸課題の解決に真摯に取り組むとともに、「未来に向けて着実に」まちづくりを進めてまいる所存であります。
さて、新型コロナウイルス感染症については、一部の都府県において2回目となる緊急事態宣言が発令されたことなどにより、感染者は減少傾向にあるものの、まだまだ収束を見通せない状況となっております。こうした中、2月から医療従事者を対象としたワクチンの先行接種が始まり、それ以降は高齢者等に順次ワクチン接種が実施されるなど、収束への道筋が少しずつ見えてきたのではないかと感じております。
本市におきましても、まずは市民の命と生活を守り抜くため、ワクチン接種を着実に実施していくとともに、「新しい生活様式」も取り入れ、引き続き議員各位をはじめ、市民の皆様と連携・協働して各施策を積極的に展開し、私が公約に掲げました「市民が豊かさを実感し活躍できるまちづくり」、「子どもや孫が故郷に住みたいと思えるまちづくり」、「みんなが不安なく、安全に暮らせるまちづくり」に邁進してまいる所存であります。
こうした思いのもと、令和3年度の市の諸施策の中で、特に重点的に取り組む事項についてご説明いたします。
まずは、新型コロナウイルス感染防止対策の推進についてであります。
2月1日付けで設置しました新型コロナウイルス感染症ワクチン接種対策室を中心に、高齢者を始め、ワクチン接種を着実に実施するとともに、基本的な感染予防対策を周知徹底するなど、感染防止に努めてまいります。
このほか、高齢者等市民の方々にご利用いただいている市街地循環バス等の車内の感染防止対策として、抗ウイルス・抗菌コーティング加工を行うほか、今年度に引き続き小中学校のエアコン整備を計画的に進めてまいります。
また、コロナ禍により、様々な影響を受けている事業者に対しては、事業の継続・雇用の維持などの支援に努めてまいります。
2点目は、移住・定住促進等による人口減少対策の充実であります。
コロナ禍により首都圏等から地方への移住の関心が高まっていることから、住宅取得費用等の補助を継続するとともに、移住お試し住宅事業を拡充するなど、移住希望者の要望にこたえる受入体制を強化し、引き続き新たな移住者を呼び込む仕組みづくりに取り組んでまいります。
また、結婚新生活の支援として、新婚夫婦が新生活をスタートするための費用の一部を補助する事業を新たに実施するほか、移住・結婚支援の情報発信や婚活イベントについては、引き続き、上十三・十和田湖広域定住自立圏全体で連携しながら取り組んでまいります。
さらに、子どもを産み育てやすい環境づくり及び子育て世帯の支援のため、新規事業として育児用品等を購入できる商品券の給付事業を実施してまいります。
3点目は、デジタル化を活用した市民サービスの向上、様々な働き方に対応したまちづくりであります。
市民の利便性の向上と行政手続の効率化のため、市民の各種申請について、県とのシステムの共同利用による電子申請を開始するほか、市街地循環バス等の現在地がわかるバスロケーションシステムの導入や市税等の納付に係るクレジットカード決済の導入などを実施してまいります。
また、ICT等を活用した農業振興については、新たに農業用ドローンの購入費用や自動運転機能を有するトラクターのGPS利用料の補助をすることにより、スマート農業の導入を促進し、生産性の向上及び労働力不足の解消に努めてまいります。
さらに、デジタル機器を活用した高齢者等の見守り支援として、家族と離れて暮らす一人暮らしの高齢者を見守るロボットを試験導入するほか、GPS位置情報を用いて道に迷ってしまった認知症の高齢者を探すことができる機器の利用助成を実施してまいります。
4点目は、公共施設の整備についてであります。
市民が安全・安心で快適に公共施設を利用できる環境を確保するため、「十和田市公共施設等総合管理計画」に基づき、施設の耐震化・改修及び更新などを計画的に進めてまいります。
令和3年度は(新)志道館、(仮称)地域交流センター及び(仮称)公共交通拠点の整備を進め、令和4年4月からの供用開始を目指してまいります。
また、市営相撲場の屋根等の整備については、令和8年度に開催される国民スポーツ大会に向けて、計画的に進めてまいります。
5点目の大型食肉処理施設の誘致による食肉流通拠点の整備及び雇用の確保については、事業者による企業立地の意向が示されたことから、早期実現に向けて引き続き取り組んでまいります。
以上、令和3年度に特に重点的に取り組む事項について申し述べましたが、その他の施策につきましては、「第2次十和田市総合計画」に掲げる基本目標に沿ってご説明いたします。
まず、基本目標1「市内外からより多くの人々や消費を呼び込めるまち」に関してであります。
農業の振興については、次世代につながる担い手の育成・確保に引き続き取り組むとともに、とわだ産品の販売促進、地産地消の推進に取り組んでまいります。
畜産の振興については、肉用牛の主産地づくりを強化するため、ゲノミック育種価に基づいた高能力雌牛の地域内保留を促進するなど、生産基盤の強化を図ってまいります。
観光の充実については、引き続き、一般社団法人十和田奥入瀬観光機構と連携し、効果的なプロモーションや新たな観光メニューの開発、事業者支援等に取り組んでまいります。
また、国立公園満喫プロジェクトが令和3年度以降も継続されることを踏まえ、奥入瀬渓流館のネイチャーガイド機能の強化及びワーケーションなどの新たな取組の創出を図りながら、奥入瀬ビジョンに基づき、自然の魅力を活かした選ばれる観光地域づくりを進めてまいります。
十和田市現代美術館では、今年度に引き続き、アーツ・トワダグランドオープン10周年記念企画展を開催するほか、常設作品の一部を入れ替えるとともに、昨年11月に国の認定を受けた「現代美術館を中核とした文化観光推進拠点計画」に基づき、アートによるまちづくりの魅力を発信してまいります。
商業・サービス業の振興及び雇用の安定については、国、県、関係機関等と連携してコロナ禍における市内経済活動の維持・促進に取り組んでまいります。
次に、基本目標2「地域全体で子育て・子育ちをしっかりと支えるまち」に関してであります。
子育て支援の充実については、引き続き、幼児教育・保育の無償化や保育料の軽減、医療費の助成などを通じ、子育て世帯の経済的負担の軽減を図るとともに、乳幼児健診や発達支援などの充実を図り、安心して子どもを産み育てられる環境づくりに努めてまいります。
また、保育所等において、日常生活を営むために医療が必要な障がいのある「医療的ケア児」の受入体制を整備するための支援をしてまいります。
子育て世代親子支援センターにおいては、児童虐待の未然防止や妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援体制の充実を図ってまいります。
さらに、子どもが健やかに成長できる環境を整えるため、老朽化が著しく、緊急性の高い保育所等の施設整備を支援してまいります。
学校教育の充実については、学習指導要領に基づき、重点課題として「授業」「心の教育」「キャリア教育」の充実に努めてまいります。
そのために、主として、GIGAスクール構想の実現に向けたICTの活用、外国語指導助手(ALT)や外国語教育コーディネーターの活用、アシスタント・ティーチャーの学校派遣による教科指導支援、夢・希望・志の育み、特色ある学校づくりの推進に取り組んでまいります。
学校施設の整備については、令和5年4月の開校に向け、洞内・松陽地区統合小中学校の建設に取り組んでまいります。
次に、基本目標3「すべての市民が健やかに暮らせるまち」に関してであります。
健康づくりの推進については、市民がより健診を受けやすい体制づくりを行うとともに、健診未受診者への受診勧奨の強化及び働き盛り世代の糖尿病予防対策に取り組んでまいります。
自殺の予防については、中学生を対象にSOSの出し方や命の大切さについての健康教育を継続するとともに、市民や市職員等が、様々な悩みを持つ人に気づき、支援できるよう、人材の育成に取り組んでまいります。
地域医療の推進については、市立中央病院において新たに「病院改革プラン」の策定を行い、着実に取り組むことにより、医療の質の向上、病院経営の健全化を図ってまいります。
また、地域医療支援病院として、かかりつけ医や訪問看護事業者との連携を強化するとともに、地域医療連携推進法人の設立により、上十三医療圏における将来的な医療提供体制の構築にも中心的な役割を果たしてまいります。
高齢者福祉の充実については、令和3年度から令和5年度までを計画期間とする「第8期十和田市高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、関係機関との協働、連携のもと、高齢者の自立支援と介護予防、要介護状態の重度化防止の推進に取り組んでまいります。
また、判断能力が不十分な高齢者等が適切な支援を受けることができるよう、十和田市成年後見センターを設置し、成年後見制度の利用を支援する体制づくりに取り組んでまいります。
障がい者福祉の充実については、地域がともに支え合う共生社会となるよう、障害のある方への日常生活や社会参加を支援するとともに、包括的な支援体制の整備に努めてまいります。
国民健康保険・後期高齢者医療制度の健全運営については、高齢者の保健事業と介護予防を一体的に取り組むフレイル予防事業を実施するなど医療費支出の適正化等に取り組んでまいります。
次に、基本目標4「だれもが楽しく学び、豊かな心と文化が息づくまち」に関してであります。
生涯学習の推進については、市民の生涯にわたる多様な「学び」を支援する取組の充実に努め、活力ある地域社会の創造を目指してまいります。
文化の振興については、市民の発表・鑑賞機会の確保を図り、文化芸術活動を支援するとともに、文化遺産の保存・継承及び活用に努めてまいります。
スポーツ活動の充実については、年齢層に応じたスポーツの機会を提供するなど、市民が暮らしの一部としてスポーツに親しむことのできる環境の整備に努めてまいります。
次に、基本目標5「地域で助け合い、災害に強く犯罪のない、安全・安心なまち」に関してであります。
防災体制については、同報系防災行政無線の活用等により緊急事態に適切に対処するとともに、自主防災組織の設立を促進し、地域防災力の強化を通して、市民の安全と安心を確保してまいります。
また、消防力の強化については、消防屯所の整備、消防団車両の更新などを計画的に行うことにより、活動環境の向上を図ってまいります。
安全・安心な暮らしの確保については、昨年度3回目の認証を取得したセーフコミュニティに継続して取り組むとともに、市街地などへの防犯カメラの設置に取り組んでまいります。
広域自治組織の育成については、多様化・複雑化する地域課題に対応するため、概ね小学校区を単位とした広域コミュニティ活動の活性化を図るとともに、新たな地域での組織化を引き続き進めてまいります。
空き家対策の推進については、「十和田市空家等対策計画」に基づき、空家等の適正管理、利活用に取り組むほか、空き家の解体に対して補助を行い、空き家の解消に努めてまいります。
消費生活の安全・安心の確保については、消費生活センターにおける安定した相談体制のもと、消費者被害の未然防止や消費者意識の醸成・向上を図ってまいります。
次に、基本目標6「ゆとりと潤いあふれる暮らしを実感できるまち」に関してであります。
自然環境の保全・活用については、自然環境・景観づくりを推進するため、稲生川ふれあい公園の補修を年次計画に基づき、引き続き行ってまいります。
生活環境の充実については、「みどりの管理計画」に基づき、公園、保全地区等の適正な管理に努めてまいります。
ごみ処理の適正化については、「第4次十和田市ごみ減量行動計画」に基づき、市民・事業者・行政が協働で、ごみ発生の抑制などに取り組み、循環型社会の形成に努めてまいります。
次に、基本目標7「快適な暮らしや活発な経済活動を支える都市基盤が整ったまち」に関してであります。
老朽化が進んでいる市営住宅については、「十和田市公営住宅等長寿命化計画」に基づき、改修工事や修繕を実施するとともに、民間資金等を活用したPFIによる整備に向けて取り組んでまいります。
また、住宅セーフティネット制度の活用促進を図るため、住宅確保要配慮者の入居に係る家賃低廉化補助事業などを実施してまいります。
合葬墓の整備については、令和6年度の供用開始を目指し、計画的に整備を進めてまいります。
公共交通網の整備については、地域の特性に応じた交通手段の組み合わせにより、公共交通の維持に努めるとともに、引き続き市街地循環バス等を運行します。
道路及び橋梁については、計画的に整備を進めるとともに、「十和田市国土強靭化地域計画」に基づき、防災・減災対策に取り組み、適正な維持管理と長寿命化を図ってまいります。
上下水道の整備については、「十和田市水道事業ビジョン2019」に基づく強靭な水道施設の構築並びに十和田下水処理場及び農業集落排水処理施設の設備更新及び耐震補強工事に取り組んでまいります。
最後に、基本目標8「地域経済社会の持続的な発展を支える強固な経営基盤が確立したまち」に関してであります。
女(ひと)と男(ひと)がともに輝くまちづくりの推進については、だれもがその個性と能力を十分に発揮することができるよう、「第3次十和田市男女共同参画社会推進計画」の策定に取り組むとともに、引き続き働き方改革を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた環境づくりに努めてまいります。
行政改革の推進については、第4次行政改革大綱及び実施計画に基づく取組を着実に進め、業務の効率化や、多様化・高度化する市民ニーズに対応できるよう、より効果的かつ効率的な行政運営に努めてまいります。
また、外部評価を含めた事務事業評価の実施により、成果重視の市政運営に努めてまいります。
次に、令和3年度の財政見通しについてであります。
令和3年度の予算編成に当たっては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めるとともに、人口減少やデジタル化の推進、公共施設等の整備など様々な課題や新たな日常・働き方に対応したまちづくりを推進することとし、将来にわたって健全で持続可能な行財政運営を行うため、選択と集中により事業の重点化を図ることとしました。
この結果、一般会計予算の歳入歳出総額は、前年度比5.6%減の337億3,000万円となり、財政調整基金からの繰入額は、前年度から9,133万3,000円減の10億9,021万4,000円となりました。
また、地方債残高は令和3年度末において、378億4,793万4,000円の見込みとなっております。
今後も、人口減少や少子高齢化の進行に加えて、新型コロナウイルス感染症に伴う経済活動の停滞等による市税等の伸び悩み、さらには社会保障関連経費の増大が見込まれますが、本市の多彩な地域資源を存分に生かしながら、市民との協働によるまちづくりに取り組み、コロナ収束後も見据え、未来への希望に満ちあふれるまちづくりを力強く進めてまいります。