令和4年第1回十和田市議会定例会(2月28日開会)において、小山田市長が令和4年度の施政方針を述べました。
※ 施政方針とは
市長の市政運営に対する基本的な考え方や主要な施策などについて述べたものです。
※ 本文書は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干変更があります。
令和4年第1回十和田市議会定例会の開会に当たり、所信の一端並びに市政運営の基本方針を申し述べます。
4期目の市政を担わせていただいてから1年が経過いたしました。改めて、市民の皆様のご期待にお応えしていかなければならないという強い使命感を持って、本市の更なる発展と諸課題の解決に真摯に取り組むとともに、SDGsの理念を踏まえ、魅力あふれるまちづくりに尽力する所存でございます。
さて、全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症については、国内や県内においても、1月以降、オミクロン株の影響により、感染者が急増するなど、まだまだ収束が見通せない状況となっております。
本市においては、これまで新型コロナウイルス対策として、総額33億円以上の経済対策、感染対策等を実施しており、特に、ワクチンについては昨年12月から3回目の接種を進めており、市民の命と生活を守り抜くため、できる限りの対応を行っているところでございます。
このような状況下ではございますが、「第2次十和田市総合計画」に掲げる将来都市像「~わたしたちが創る~希望と活力あふれる 十和田」の実現に向け、議員各位をはじめ、市民の皆様と連携・協働し、取り組んでまいる所存であります。
それでは、令和4年度に重点的に取り組む施策についてご説明いたします。
本市の人口は令和2年国勢調査において、前回調査の平成27年と比較し4.8パーセント減となり、昨年3月には残念ながら6万人を切ってしまいました。また、人口減少に伴い、少子化、高齢化も進行しており、この人口減少の克服が本市の最重点課題であると認識しております。
このような思いのもと、市民の安全・安心な暮らしを守り、交流人口や関係人口の増加等「新たな人の流れの創出」を目指すこととし、来年度予算においては「子育て支援の充実」、「経済基盤の強化」、「デジタル化の推進」の大きく3つの施策に重点的に取り組むことといたしました。
それぞれの施策の主な取組についてご説明いたします。
まず始めに、「子育て支援の充実」についてです。
本市では、これまでも結婚、出産、子育ての希望を叶えるための各種施策に取り組んでまいりましたが、来年度においては子育て世帯を更に支援するための施策を積極的に実施いたします。
新規事業として、出産育児一時金を超えた分娩費用の一部助成を行う出産費用支援事業を実施いたします。
また、これまで自己負担としていた産婦の健診費用や乳児の股関節脱臼検査費用を助成いたします。
子ども医療費の助成については、所得制限の要件を緩和して、大幅に対象者を増やすとともに、新たに高校生の入院費用も助成対象といたします。
このほか、子育て情報が適時に入手でき、記録の保存も可能な母子手帳アプリや、外国人妊産婦支援のための音声通訳機の導入等のICT化をすすめ、子育て世代が孤立することのないよう、支援の充実を図ってまいります。
2点目は、「経済基盤の強化」です。
人口減少の克服には働く場や人材の確保が必須であることから、基幹産業である観光業や農業等の産業の振興を図り、経済基盤の強化や地域の活性化につなげてまいります。
新規事業として、観光の振興のため宿泊割引と地域クーポンを組み合わせた本市独自の宿泊キャンペーンを実施いたします。
また、農業の振興については、新規就農者の確保に引き続き取り組むほか、旧十和田食肉センターの改修等に対し、必要な支援をし、雇用の場の確保を図ってまいります。
更に、コロナ禍によりテレワーク等の新しい働き方が浸透し、首都圏等から地方への移住の関心が高まっていることから、働く場所を選ばないリモートワーカー等の本市への移住促進事業に取り組みます。
人材の確保については、就業後、奨学金を返還している方を対象に返還額の一部を補助し、若年世代の移住・定住を促進いたします。
3点目は、「デジタル化の推進」です。
コロナ禍のもと、新たな日常・働き方への対応として、市民の利便性の向上と行政サービスの維持・向上が求められており、本市においてもデジタル行政推進計画を定め、これまでも、電子申請の推進など行政手続の効率化に積極的に取り組んでまいりました。
令和4年度においては政策財政課内の情報政策室を「情報政策課」に昇格させ、DXデジタルトランスフォーメーションの取組を全庁的に推進することとし、観光・農業分野等へのデジタル化を図るための方針の策定等に取り組むこととしております。
他の新規事業としては、住民票や印鑑登録証明書等をコンビニエンスストアで交付するシステムの構築や、公共施設予約システムの稼働のほか、広報とわだの多言語化や読み上げ機能を有するデジタル配信を導入します。
また、スマート農業の推進のため、畜産分野でのAIを活用した分娩監視カメラ等の導入に要する経費の一部を補助することにより、生産性と所得の向上を図るほか、引き続きドローンオペレーターの資格取得に要する経費やドローンの購入に要する経費の一部を補助いたします。
以上、重点的に取り組む施策について申し述べましたが、その他の施策につきましては、「第2次十和田市総合計画」に掲げる基本目標に沿ってご説明いたします。
まず、基本目標1「市内外からより多くの人々や消費を呼び込めるまち」に関してであります。
中心市街地の活性化については、中心市街地活性化基本計画の主要事業であるまちなか交通広場及び(仮称)地域交流センターの供用開始により、賑わいと魅力のある中心市街地づくりに取り組んでまいります。
とわだ産品の販売拡大については、本市の豊富で魅力的な農産物のブランドイメージの強化、特長を活かした付加価値の高い商品づくりや、意欲ある生産者に対する電子商取引販売の支援を行います。
畜産の振興については、肉用牛のゲノミック育種価に基づいた優良雌子牛の地域内保留を促進するとともに、家畜防疫対策に努めてまいります。
林業の振興については、市内全域のレーザー測量データを基に、森林資源の解析を実施し、今後の森林整備の基礎となるデータの作成を行います。
観光力の強化と充実については、引き続き、一般社団法人十和田奥入瀬観光機構と連携し、効果的なプロモーションや新たな観光メニューの開発、事業者支援等に取り組んでまいります。
また、国立公園満喫プロジェクト及び奥入瀬ビジョンに基づき、観光客の上質な滞在環境の創出、冬季利用の促進等、奥入瀬ビジョンの実現に向け、自然の魅力を活かした選ばれる観光地域づくりを進めてまいります。
十和田市現代美術館では、今年度増設した常設作品等、新たな魅力の発信に努めるほか、令和2年に国の認定を受けた「現代美術館を中核とした文化観光推進拠点計画」に基づき、アートによるまちづくりの取組を進めてまいります。
商業・サービス業の振興及び雇用の安定については、アフターコロナを見据えながら、国、県、関係機関等と連携して、市内経済活動の維持・促進に取り組んでまいります。
次に、基本目標2「地域全体で子育て・子育ちをしっかりと支えるまち」に関してであります。
子どもを産み育てられる環境づくりについては、妊娠期から子育て期までの切れ目のない子育て支援を充実するとともに、とわだde子育て応援ギフト券の給付事業や幼児教育・保育の無償化、保育料の軽減等を通じ、引き続き、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ってまいります。
また、むし歯予防対策として、年長児を対象に保育所等で実施するフッ化物洗口事業に新たに取り組み、子どもたちの健康づくりを推進してまいります。
学校教育の充実については、学習指導要領に基づき、未来を創り出していくために必要な資質・能力を備えた児童・生徒の育成を目指し、重点課題として「授業」「心の教育」「キャリア教育」の充実を図るため、主体的な学びや情報活用能力を育むICT等の活用、教科指導を支援する外国語指導助手(ALT)やアシスタントティーチャーの活用等により、特色ある学校づくりの推進に取り組んでまいります。
学校施設の整備については、令和5年4月の開校に向け、大深内小中学校の建設に引き続き取り組んでまいります。
次に、基本目標3「すべての市民が健やかに暮らせるまち」に関してであります。
健康づくりの推進については、市民が健診を受けやすい体制づくりを行うとともに、健診未受診者への健康教育や啓発による受診勧奨の強化及び働き盛り世代の糖尿病予防対策に取り組んでまいります。
自殺の予防については、中学生を対象にSOSの出し方や命の大切さについての健康教育を継続するとともに、生活困窮者等に対する相談の強化やゲートキーパーの養成により、様々な悩みを持つ人に気づき、支援できるよう、人材の育成に取り組んでまいります。
地域医療の推進については、青森県地域医療構想を踏まえた「病院改革プラン」の策定に取り組むとともに、地域医療連携推進法人の参加病院として、地域医療の機能分担及び業務の連携を推進し、医療の質の向上、病院経営の健全化を図ってまいります。また、弘前大学への寄附講座の設置により、医師の確保を図ってまいります。
このほか、地域医療支援病院として、医療・福祉・介護等の連携を進め、上十三医療圏における効率的な医療提供体制の確保にも中心的な役割を果たしてまいります。
高齢者福祉の充実については、「第8期高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、関係機関との協働、連携のもと、高齢者の自立支援と介護予防、要介護状態の重度化防止の推進に取り組んでまいります。
障害者福祉の充実については、地域福祉計画の基本理念である「ともに支え合う 地域共生のまちづくり とわだ」に基づき、障害のある方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けていくための包括的な支援体制の整備に努めてまいります。
国民健康保険事業及び後期高齢者医療事業については、糖尿病性腎症重症化予防事業や高齢者の保健事業と介護予防を一体的に取り組むフレイル予防事業を実施するほか、医療費支出の適正化等により安定的な事業運営を図ってまいります。
次に、基本目標4「だれもが楽しく学び、豊かな心と文化が息づくまち」に関してであります。
生涯学習の推進については、市民カレッジ事業の充実を図るなど市民の生涯にわたる多様な「学び」を支援し、活力ある地域社会の創造を目指してまいります。
また、市民図書館においては、資料の充実を図り、読書活動の推進に積極的に取り組むとともに、地域の知の拠点としての役割を果たしてまいります。
文化の振興については、発表・鑑賞機会の充実を図り、文化芸術活動を支援するとともに、文化遺産の保存・継承及び活用に努めてまいります。
スポーツ活動の充実については、4月に開館予定の新志道館において多くの市民に武道やスポーツに親しんでいただくなど、引き続き、市民が暮らしの一部としてスポーツが楽しめる環境の整備に努めてまいります。
次に、基本目標5「地域で助け合い、災害に強く犯罪のない、安全・安心なまち」に関してであります。
防災体制については、同報系防災行政無線を活用し適切に対処するとともに、引き続き自主防災組織の設立促進に努め、地域防災力の強化を通じて、市民の安全と安心を確保してまいります。
特に、本年は、青森県総合防災訓練が本市で開催されることから、改めて関係機関との災害時の応急対策に関する検証・確認を行うとともに、市民の防災意識の高揚を図ってまいります。
また、消防団活動の強化・充実を図るため、引き続き消防屯所、消防団車両等の更新を計画的に行うほか、消防団員の報酬の見直しを行うなど、活動環境の向上を図ってまいります。
安全・安心な暮らしの確保については、セーフコミュニティに継続して取り組むとともに、警察や学校等と連携し、通学路の安全確保を図ってまいります。
広域自治組織の育成については、多様化・複雑化する地域課題に対応するため、概ね小学校区を単位とした広域コミュニティ活動の活性化を図るとともに、新たな地域での組織化を進めてまいります。
移住・定住人口の拡大については、住宅取得費用の補助について、対象者を拡大し、移住の促進を図ってまいります。
また、新婚夫婦が新生活をスタートするための費用を補助する結婚新生活支援事業を引き続き実施するとともに、上十三・十和田湖広域定住自立圏の連携事業として移住・結婚支援の情報発信や婚活イベントに取り組んでまいります。
空き家対策の推進については、「空家等対策計画」に基づき、空き家等の適正管理、有効活用について、施策を展開するほか、空き家の解体に対して補助を行い、空き家の解消に努めてまいります。
消費生活の安全・安心の確保については、消費生活センターの相談体制の充実を図り、消費者被害の未然防止や消費者意識の醸成・向上を図ってまいります。
次に、基本目標6「ゆとりと潤いあふれる暮らしを実感できるまち」に関してであります。
生活環境の充実については、「みどりの管理計画」に基づき、都市公園、保全地区等の適切な維持管理に努めてまいります。
ごみ処理の適正化については、「第4次ごみ減量行動計画」に基づき、市民・事業者・行政が協働でごみ発生の抑制やバイオマスを活用した生ごみの減量事業等に取り組み、循環型社会の形成に努めてまいります。
次に、基本目標7「快適な暮らしや活発な経済活動を支える都市基盤が整ったまち」に関してであります。
(仮称)市営住宅北園団地・瀬戸山団地整備事業については、令和6年度の完成を目指して取り組みを進めてまいります。
合葬墓の整備については、令和6年度の供用開始に向けて、実施設計を進め、墓地需要へ適切に対応してまいります。
公共交通網の整備については、地域の特性に応じた交通手段を組み合わせることで、公共交通の維持に努めるほか、市街地循環バスの運行経路を拡大するとともに、新たに藤坂・伝法寺地区に予約制乗合タクシー事業を導入するなど、「市民の足」の確保を図ってまいります。
また、4月に供用を開始する予定のまちなか交通広場については、本市の公共交通の拠点として、市民や本市を訪れる方にとって、利用しやすい施設となるよう努めてまいります。
道路及び橋梁については、計画的に整備を進めるとともに、「国土強靭化地域計画」に基づき、防災・減災対策に取り組み、適正な維持管理と長寿命化を図ってまいります。
また、主要地方道三沢十和田線の渋滞解消や広域的な幹線道路等の整備促進について、引き続き、関係機関に要望してまいります。
上下水道の整備については、「水道事業ビジョン2019」に示す「強靭な水道施設の構築」及び「下水道ストックマネジメント実施方針」に基づき、持続的な上下水道機能の確保とライフサイクルコストの低減に取り組んでまいります。
最後に、基本目標8「地域経済社会の持続的な発展を支える強固な経営基盤が確立したまち」に関してであります。
男女共同参画社会の推進については、令和4年度を初年度とする「第3次男女共同参画社会推進計画」の取組を進め、すべての人が個人として尊重され、個性と能力を十分に発揮することができる環境づくりに努めてまいります。
行政改革の推進については、より効果的かつ効率的な行政運営に向けて、引き続き第4次行政改革大綱及び実施計画に基づく取組を進め、多様化・高度化する市民ニーズに対応できるよう努めてまいります。
また、外部評価を含めた事務事業評価の実施により、成果重視の市政運営に努めてまいります。
次に、令和4年度の財政見通しについてであります。
令和4年度の予算編成に当たっては、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中、人口減少の克服を最重点課題とし、将来にわたって健全で持続可能な行財政運営を行うため、選択と集中により事業の重点化を図りました。
この結果、一般会計予算の歳入歳出総額は、前年度比0.5パーセント増の338億9,000万円となり、財政調整基金からの繰入額は、前年度から1億9,848万5,000円増の12億8,869万9,000円となりました。
また、地方債残高は、令和4年度末において、364億7,064万7,000円の見込みとなっております。
今後も、人口減少や少子高齢化の進行に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う経済活動の停滞等による市税等の伸び悩み、さらには社会保障関連経費の増大が見込まれますが、本市の多彩な地域資源を存分に生かしながら、市民との協働によるまちづくりに取り組み、多くの方々に「住みたい」、「住み続けたい」、「訪れたい」まちとして強く支持されるよう、未来への希望に満ちあふれるまちづくりを力強く進めてまいります。