平成26年第1回十和田市議会定例会(2月26日開会)において、小山田市長が平成26年度の施政方針を述べました。
※ 施政方針とは
市長の市政運営に対する基本的な考え方や主要な施策などについて述べたものです。
※ 本文書は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干変更があります。
平成26年第1回十和田市議会定例会の開会に当たり、所信の一端並びに市政運営の基本方針を申し述べます。
私が、市長へ就任してから早いもので5年の歳月が過ぎました。この間、市民の皆様の幸せを願い、この十和田市に元気が満ちあふれるよう、市民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力を賜りながら、私の思いを施策にのせて、誠心誠意行政運営に取り組んでまいりました。
来たる平成26年度は、新市が誕生してから10年目を迎えることとなります。
この10周年という節目を迎えるに当たり、改めて先達に感謝し、また、その足跡に学びながら、うま年という本市に馴染みの深い年に、未来へ向けて大きく飛躍できるよう決意を新たに「元気な十和田市づくり」に、全力を尽してまいる所存であります。
さて、我が国は、一昨年の政権交代を契機に打ち出した経済政策の効果により株式市場や為替市場においては、株価の上昇や円安傾向へと転換し、日本経済は回復基調にあると言われております。
地方においても、早くこの景気回復を実感できるようになればと切に願うものであります。
一方、昨年は、TPP協定への事実上の参加表明、あるいは社会保障と税の一体改革による本年4月からの消費税率引き上げの決定など、我が国の社会全体にとって大きな転換期へつながる出来事がありました。
このような国全体での動きに対する本市への影響は推し測ることが困難ではありますが、市民の皆様並びに議員各位と協働して、これらの課題に創意と工夫をもって取り組んでいかなければならないものと強く認識しております。
こうした考えのもと、はじめに、平成26年度の主要施策の中でも特に申し上げたい事項についてご説明いたします。
昨年から整備を進めてまいりました、市民交流の促進と賑わい創出の拠点となる市民交流プラザが平成26年度にオープンいたします。また、教育のための新しい拠点である(仮称)教育プラザも一部供用を開始する予定となっております。
両施設には、多くの市民が集い、さまざまな市民活動がより一層充実されることに大きな期待を寄せているところであります。
隈研吾氏の設計による市民交流プラザ、安藤忠雄氏が設計を手掛けた(仮称)教育プラザ、そして、西沢立衛氏の設計による現代美術館を併せ、3人の世界的な建築家による建築物そのものが新たなまちの魅力となり、市民が誇れるまちづくりに大きく貢献するものと確信しております。
また、平成21年8月に国内で2番目の認証を受けました「セーフコミュニティ」については、市民・関係機関等との協働により、全ての市民が安全・安心を実感できるまちづくりを推進していくため、事故やけが予防対策に継続して取り組むとともに、平成26年度の再認証に向けた取組を進めてまいります。
次に、市制施行10周年記念事業についてであります。
新市誕生から10年という節目を迎えるに当たり、市民の皆様とともに、この10年間の歩みを振り返りつつ、新たな歴史のスタートを飾るための事業として、「市制施行10周年記念式典」をはじめ、古き町並みの歴史を後世に伝えるための「町並み模型製作事業」、原動機付自転車用の「オリジナルナンバープレート作成事業」等のほか、新たに十和田市長杯全国パークゴルフ交流大会を創設するなど、年間を通じて講演会やイベントの充実を図ってまいります。
次に、昨年来、検討を行っております県立施設の誘致につきましては、具体的な施設を決定し、県に対して要望してまいります。
次に、予算特別枠による取組についてであります。
主要施策を着実に進展させるための特別枠については、「元気な十和田市の実現に関する取組」及び「日本一を目指した特色のある子ども教育の取組」を二つの柱として、特に意を用いて取り組んでまいります。
まず、一つめの柱である「元気な十和田市の実現に関する取組」としては、「農業振興」、「観光振興」、「市民協働のまちづくり」、「市民の健康づくり」を眼目に掲げております。
農業振興においては、国庫補助の対象とならない農家の小型農業用機械等の導入を支援し、経営の安定と生産意欲の向上を図ってまいります。
また、野菜を栽培する、ほ場の土壌診断による健康な土づくりを支援し、おいしい十和田野菜の生産拡大を促進してまいります。
このほか、水稲の1等米比率の低下を抑制するため、病害虫防除対策等の支援を行ってまいります。
農業の6次産業化においては、県内有数の農畜産物の一大産地としての強みを生かし、6次産業化を支援するなど、農家所得の向上を図ってまいります。
また、「十和田湖ひめますブランド」の確立に向けた設備整備を支援し、ブランド力向上につなげてまいります。
観光振興においては、特に十和田湖畔地区における観光入込客、とりわけ滞在型の観光客は、いまだ震災前の水準には戻っておらず、依然として厳しい状況にあります。
このため、十和田湖畔地区の観光再生に向けた行動計画に基づき、引き続き誘客促進を図る事業を実施し、十和田湖観光の活性化に取り組んでまいります。
また、市街地においては、近年、大きな話題性とともに、集客効果が見込まれるプロジェクションマッピングを冬のイベントとして実施し、誘客促進を図ってまいります。
市民協働のまちづくりにおいては、「元気な十和田市づくり市民活動支援事業」を拡充し、より多くの団体が十和田市の元気につながる取組を行えるよう支援してまいります。
市民の健康づくりにおいては、「第2次健康とわだ21」の実施計画に基づき、生活習慣病予防対策を推進し、健康寿命の延伸を図ってまいります。
特に、生活習慣病の発症や重症化予防のため、特定健康診査及びがん検診の受診率向上を目指すとともに、市民の健康教養の向上を図る事業を実施してまいります。
併せて、国民健康保険事業においても特定健康診査・特定保健指導の自己負担の無料化を実施してまいります。
次に、二つめの柱である「日本一を目指した特色のある子ども教育の取組」としては、「特色のある教育活動」、「英語教育」、「講演会の開催」を眼目に掲げております。
初めに、特色のある教育活動としては、各小中学校における日本一を目指した特色あるさまざまな教育活動の支援を行ってまいります。
また、英語教育の重要性を鑑み、中学校3年生全員を対象に、実用英語技能検定の検定料を助成し、英語力を身につけるための支援を行ってまいります。
さらに、中学校2年生を対象に、第一線で活躍する著名人を講師に迎え「夢への挑戦」をテーマとした講演会を開催いたします。
以上、平成26年度における主要な施策について申し述べましたが、市の諸施策につきましては、「十和田市総合計画」におけるまちづくりの基本目標に沿ってご説明いたします。
第1に、人と自然が共生する「しぜん感動・創造都市」についてであります。
十和田湖、奥入瀬渓流に代表される本市の恵まれた自然を後世に伝えていくため、国の直轄権限代行により事業着手がなされた一般国道103号青橅山バイパスの早期完成の要望や、完成後の奥入瀬渓流の利活用に向け、マイカー規制を中心としたエコツーリズムプロジェクトなどに取り組んでまいります。
加えて、これらの貴重な自然を保護するとともに、その恵みを利活用した地域社会をつくるため、「ユネスコエコパーク」への登録に向けて取り組んでまいります。
一方、市街地については、良好な市街地形成を図り、一層魅力あるまちを次世代に引き継いでいくため、「十和田市都市計画マスタープラン」に基づき、用途地域の見直し及び保全地区の整備を進めてまいります。
水道事業については、「十和田市上水道第7次拡張事業」の推進と、焼山地区と周辺の簡易水道等の統合計画に 取り組み、管理と経営の効率化を図ってまいります。
また、水道施設の耐震化を着実に進め、ライフラインの機能強化を図り、安全で安心な水道水の安定供給に努めてまいります。
下水道事業については、効率的な整備に努め、処理施設の長寿命化計画に基づき、適切な更新を進めるとともに、引き続き十和田下水処理場の耐震化に取り組んでまいります。
農業・農村環境の整備については、農地を保全し、多面的機能を守っていくため、直接支払制度を活用するとともに、中山間地域総合整備事業により、農業用用排水路・農道・集落道を県営事業により整備してまいります。
道路については、計画的な整備を進めるとともに、適正な維持管理に努めてまいります。
また、県に対して、主要地方道三沢十和田線の鉄道敷地を活用した整備拡充を要望してまいります。
廃棄物対策については、ごみの減量化とリサイクルの推進を図り、循環型社会の形成に努めてまいります。
第2に、豊かな心をはぐくむ「こころ感動・創造都市」についてであります。
学校教育については、「知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな子ども」を育成するため、学習指導要領の趣旨を踏まえ、学力向上対策事業や教育相談事業などの推進を図り、「個を生かし生きる力と夢・希望・志をはぐくむ教育活動」を支援してまいります。
また、子ども夢チャレンジ基金による全国大会等の派遣補助や、障害を持つ子ども達を支える特別支援教育支援員の増員、小学校のコンピュータの更新等、学校教育環境の整備に努めるとともに、十和田湖や奥入瀬渓流を学ぶ郷土学習充実事業に取り組んでまいります。
社会教育については、市民一人一人の学習意欲、ニーズに応えるべく「学び」を支援し、学校・家庭・地域の連携による社会全体の教育力の向上、学習成果の活用に努めるとともに、青少年の郷土愛をはぐくみ、次代を担う人材育成に努めてまいります。
また、(仮称)教育プラザが一部供用開始となりますが、図書館機能の一層の充実強化はもとより、ソフト面においても「十和田市家庭読書の日」の周知・普及等に努めるとともに、学校図書充足率100%を達成した小・中学校と連携し、読書機会の拡充を図ってまいります。
文化芸術の振興については、市民の発表、鑑賞機会の充実を図り、文化芸術活動を支援するとともに、文化財の保存及び活用に努めてまいります。
社会体育については、市民一人一人がそれぞれの年代やライフスタイルに応じて、スポーツを楽しむことができる生涯スポーツ社会の実現に向けて、環境の整備充実に努めてまいります。
また、青森県フットボールセンターとして認定されている高森山総合運動公園とその補完施設である若葉球技場を活用して、近隣の市町村や関係団体と連携し、各種サッカー大会等の誘致・開催に取り組み、本市のスポーツ振興とスポーツによる地域の活性化を図ってまいります。
第3に、安心・安全を支える「くらし感動・創造都市」についてであります。
少子化対策については、安心して生み育てられるよう妊婦健診の費用助成と通院費用の一部助成を行うとともに、乳幼児健診等の実施により乳幼児の健康増進及び子育て支援を推進してまいります。
また、市民の健康と生命を守るため、産科医をはじめとする医師確保に努め、病院経営の早期安定化と高度医療の充実を図ってまいります。
国民健康保険事業については、より安定的な運営を図るため、医療費適正化対策を推進してまいります。
児童福祉については、児童の安全確保及び保育サービスの向上のため、特別保育事業の充実を図り、子育てを支援してまいります。
また、平成27年度からの子ども・子育て支援新制度の施行に向けて、「子ども・子育て支援事業計画」の策定に取り組んでまいります。
障害者福祉については、障害者総合支援法に基づき、障害のある方々の日常生活や社会生活の相談支援体制を充実するとともに、市民の理解を深めるための啓発事業を実施してまいります。
生活保護については、就労支援員を配置し、就労可能な被保護者の自立を支援してまいります。
高齢者福祉については、高齢者が住み慣れた地域で元気で暮らせるよう介護予防事業の充実を図るとともに、在宅の高齢者を地域全体で見守るための「高齢者あんしん見守りネットワーク」体制の推進に努めてまいります。
また、平成27年度からの「第6期介護保険事業計画」については、高齢者の意識調査の結果を参考に、市民の要望等を踏まえ策定してまいります。
消費生活の安心・安全の確保については、消費生活センターでの安定した相談体制の確立を図るとともに、消費生活における被害の未然防止のため、消費者への意識啓発を推進してまいります。
防災については、東日本大震災を教訓に、市民の安全と安心を確保するため、緊急事態に適切に対処できる体制の強化や自主防災組織の充実を図ってまいります。
消防力の強化については、消防屯所の改築、消防車両の更新を順次行うとともに、資機材の整備など、活動環境の改善を図ってまいります。
消防団員の確保については、住民の理解を深めるため広報、啓発活動を展開するとともに、事業所などとの連携を図り、消防団への入団を促進してまいります。
第4に、にぎわいと活力あふれる「しごと感動・創造都市」についてであります。
本市産業の基幹的な役割を担う農業については、米政策の大幅な見直し及び農業基本政策の抜本改革など農業政策の大転換が行われることから、農業者や営農組織の経営改善への支援を推し進め、収益性・生産性の高い農地利用を促進するとともに、強い農業づくりのための機械導入などのほか、先ほど申し上げました特別枠事業と合わせ、農業所得の安定向上を図ってまいります。
また、営農組織、新規就農・経営継承等を支援するなど、多様な担い手の育成・確保に努めてまいります。
とわだ産品の販売促進については、1次産品はもとより、付加価値の高い商品づくりに取り組むとともに、トップセールスによる販路の確保・拡大並びに地産地消の推進のための実践体制の強化を図ってまいります。
畜産については、肉用牛主産地づくりによる畜産基盤の強化、公共牧場の機能強化及び利用促進、北里大学との連携による畜産農家の飼料自給率向上を図り、低コスト飼料の生産、肉用牛の飼養管理の確立、担い手の育成等により畜産振興を図ってまいります。
林業については、森林の有する多面的機能を総合的かつ高度に発揮させるため、適正な森林施業の実施により、健全な森林資源の維持増進を図ってまいります。
観光については、多種多様な魅力を積極的に情報発信してまいります。また、十和田湖、奥入瀬、現代美術館、新渡戸記念館等の点となる観光資源を有機的につなげるとともに、十和田湖ヒメマスや十和田バラ焼きなど食の魅力も組み込みながら、関係機関との連携による観光推進体制の強化に努めてまいります。
さらに、上十三・十和田湖広域定住自立圏の構成市町村と連携し、広域観光を推進するとともに、周遊型観光の確立と観光客受入体制の充実を図ってまいります。
奥入瀬焼山地区については、花と温泉とアートを柱とした活性化基本計画に基づく事業を推進し、一層の魅力向上につなげてまいります。
現代美術館については、魅力的な企画展や街なかでのアート事業等を引き続き実施し、現代アートを活用したまちづくりプロジェクト「アーツトワダ」を推進してまいります。
中心市街地の活性化については、コンパクトで賑わいのあるまちづくりを目指し、商店街が実施する賑わい創出事業などを支援するとともに、街なか居住の促進に取り組んでまいります。
また、これまでの取組を検証し、今後の方向性を検討するための基礎調査を実施してまいります。
雇用の創出については、地域産業の振興を担う人材育成と地元特産品を活用した加工品開発を推進する「十和田市雇用創造推進協議会」の活動を支援するとともに、高齢者の雇用機会の拡大と労働環境の充実に取り組んでまいります。
第5に、いきいきと活躍できる「しみん感動・創造都市」についてであります。
市民活動については、本市における自治の基本理念、まちづくりを進めていくための基本的なルールを定めた「十和田市まちづくり基本条例」に基づき、市民・議会・行政が連携、協力して、市民主体の協働によるまちづくりに努めてまいります。
また、地域コミュニティ組織の強化や地域活動の活性化を目指し、市職員による町内会の地区担当制度を設け、地域の実情把握や課題の共有に努めてまいります。
交流の促進については、急速に進む人口減少社会の中でも「安心して暮らせる」圏域を形成するため、周辺9市町村と連携しております「上十三・十和田湖広域定住自立圏」について、さらに内容を拡大・拡充してまいります。
行政改革については、「第2次行政改革大綱」の着実な取組を進めるとともに、平成27年度を初年度とする「第3次行政改革大綱」を策定し、引き続き効率的で効果的な行政運営に取り組んでまいります。
また、外部評価を含めた事務事業評価を実施し、評価の客観性及び信頼性の向上と成果重視の市政運営に努めてまいります。
さらに、市民に信頼される行政として、情報公開に努め、行政の透明性の向上と説明責任を徹底するとともに、親切丁寧な窓口業務や各種相談受付等、迅速で適切な対応による市民サービスの向上に努めてまいります。
最後に、平成26年度の財政見通しについてであります。
景気の回復に明るい兆しが見られるものの、社会保障関連経費の増大に加え、本年4月には消費税率が引き上げられるなど、本市の財政を取り巻く環境は、依然として厳しい状況が続いております。
このような状況を背景に、これまで市民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力により、行財政の効率化や経費の節減に努め、持続可能な財政基盤の構築に取り組んでまいりました。
この結果、ここ数年は、地方交付税の増加や国の財政的な政策の実施などにより「基金に頼らない財政運営」が可能となっておりました。
しかしながら、今後も続くものと予想される社会保障費の増大や病院事業への対応、学校施設の耐震化あるいは大規模改修、公共施設等の老朽化対策など大きな課題を抱えており、加えて、合併算定替終了に伴う地方交付税の大幅な減少も見込まれ、今後の財政見通しは厳しいものになるものと認識しております。
このことから、平成26年度の予算編成に当たっては、「市民の安心・安全な暮らしを守る重要な施策」、「十和田市の元気につながる着実な取組」、「将来負担の軽減につながる効果的な取組」に重点的に配分するとともに、政策の実現を着実に進めるための特別枠も引き続き設けました。
この結果、一般会計予算の歳出総額は、前年度比2.3%増の296億7,000万円となり、財政調整基金からの繰入額は、前年度から13億2,737万2,000円増の14億2,487万6,000円となりました。
今後も、厳しさが増す財政環境にありますが、行財政改革を推し進めながら公営企業会計を含めた市全体の財政運営を勘案し、「感動・創造都市」の実現を目指してまいります。
以上、所信の一端と平成26年度における市政運営の諸施策についての概要を申し述べさせていただきました。