平成27年第1回十和田市議会定例会(2月26日開会)において、小山田市長が平成27年度の施政方針を述べました。
※ 施政方針とは
市長の市政運営に対する基本的な考え方や主要な施策などについて述べたものです。
※ 本文書は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干変更があります。
平成27年第1回十和田市議会定例会の開会に当たり、所信の一端並びに市政運営の基本方針を申し述べます。
去る1月28日に市制施行10周年記念式典を執り行い、関係各位をはじめ市民の皆様とともに、これまでの歩みを振り返り、そして、今後の更なる躍進を誓う第一歩といたしました。
新市が誕生してから、これまでの10年間、我が国の社会経済情勢に目を向けてみますと、長引く景気の低迷や少子高齢化の進展、そして何よりも人口が減少に転じるなど、大きな転換期を迎えております。
こうした状況のなか、国では構造改革や地方分権をはじめとする行財政改革の推進とともに、少子高齢化・人口減少社会への対応として、地方創生をキーワードとする重要施策や子ども・子育て支援新制度、新たな介護保険制度などをこの4月からスタートいたします。
このようなことを背景に、本市においては、平成27年度を「地方創生の元年」と位置づけ、国や県と軌を一にしながら、「元気な十和田市づくり」に邁進してまいる所存であります。
こうした思いのもと、地方創生に関する平成26年度補正予算案の計上事業分も合わせながら、平成27年度の主要施策の中で、特に申し上げたい事項についてご説明いたします。
はじめに、地方創生に対する国の経済対策として、2つの交付金が創設されたことに伴い、本市の平成26年度の補正予算案において対応いたします取組の概要についてご説明いたします。
まず、一つめの地域消費喚起・生活支援型の交付金については、プレミアム商品券の発行を予定しており、多子世帯や低所得者向けには、プレミアム率をさらに上乗せした商品券とし、消費喚起等につなげてまいります。
二つめの地方創生先行型の交付金については、地方版総合戦略の策定、UIJターン助成、観光振興、創業支援、販路拡大、少子化対策など、地方創生につながる事業を平成27年度予算から前倒しする形で先行的に実施してまいります。
次に、平成27年度の特徴的な取組についてご説明いたします。
平成27年度は、今後の市政運営全般に関わる重要な計画の策定に着手いたします。
その一つが、本市の最上位計画に位置付けられる総合計画の策定であります。
現在の総合計画は、平成28年度末に終了となりますことから、平成29年度を初年度とする次期総合計画の策定に着手してまいります。
また、昨年成立いたしました「まち・ひと・しごと創生法」に基づく、地方版総合戦略の策定も総合計画の策定に先行した形で取り組んでまいります。
この地方版総合戦略は、少子高齢化や人口減少への対策を国や県と歩調を合わせながら取り組むものであり、庁内若手職員によるプロジェクトチームからの提案事業の実践と併せ、専門部署を設け、策定作業を進めてまいります。
さらには、公共施設等総合管理計画の策定であります。
この計画もまた、国と歩調を合わせながら取り組むものでありますが、人口減少に伴い、公共施設等の利用需要の変化が予想されることから、施設等の更新・統廃合・長寿命化などについて、今後厳しさが増すと予想される財政状況を踏まえながら、長期的な視点をもって策定作業に取り組んでまいります。
このほかにも、5年間という期限があります合併特例債を活用した新庁舎建設事業にも着手してまいります。
また、地方創生元年にふさわしい、本市最大規模のイベントとして「第10回B-1グランプリin十和田」が本年10月に開催されますことは大変喜ばしく、全国から訪れる来場者の方々を「市民を挙げたおもてなし」で迎えるとともに、このチャンスを生かし、全国に向けて本市の魅力を発信することにより、地域の活性化と観光振興に結び付けてまいります。
公共施設の整備については、本年1月に、安藤忠雄氏の設計により整備を進めてまいりました市民図書館の一部と教育研修センターの供用を開始いたしました。
特に図書館は、本を読むだけではなく、多くの市民が集い、さまざまな市民活動が行われる場として利用されることを期待しているところであります。
現在、グランドオープンに向けて学習コーナー等の整備を進めており、現代美術館、市民交流プラザと併せて、建物による新たなまちの魅力も発信してまいります。
また、全ての市民が安全・安心を実感できるまちづくりを推進するセーフコミュニティについては、本年2月の再認証を新たなスタートと位置づけ、市民・関係機関等との協働により、事故やけがの予防対策に継続して取り組んでまいります。
次に、予算特別枠による取組についてであります。
主要施策を着実に進展させるための特別枠については、「少子化対策、人口減少対策」、「元気な十和田市の実現に関する取組」、「健康寿命延伸対策」の3つを眼目として、意を用いて取り組んでまいります。
一つめの眼目であります「少子化対策、人口減少対策」としては、先に申し上げました地方創生に関する取組と一部重複いたしますが、「少子化、定住など新たに実施する取組」を進めてまいります。
特に移住に関しては、空き家バンクをはじめ、移住お試しツアーや移住お試し住宅の整備などを実施するとともに、パンフレットを作成し、首都圏に向けた情報発信に努めてまいります。
また、地域協力活動を担う地域おこし協力隊員を募集し、十和田湖畔地区や焼山地区の観光再生に取り組んでまいります。
二つめの眼目であります「元気な十和田市の実現に関する取組」としては、「市民と協働による元気なまちづくりへの取組」、「米価下落対策」、「小規模農家等対策」、「野菜のブランド化対策」、「農業の6次産業化推進対策」を進めてまいります。
特に、米価下落対策に関しては、主食用米の生産意欲を向上させるために、主食用米再生産緊急支援事業に取り組んでまいります。
三つめの眼目であります「健康寿命延伸対策」としては、「健診や中高齢者の健康づくり」を進めてまいります。
具体的には、運動習慣の定着や各種健診等の受診率向上を図るため、健康長寿応援事業に取り組んでまいります。
以上、平成27年度における主要な施策について申し述べましたが、市の諸施策につきましては、「十和田市総合計画」におけるまちづくりの基本目標に沿ってご説明いたします。
第1に、人と自然が共生する「しぜん感動・創造都市」についてであります。
市街地の良好な環境づくりについては、「みどりの管理計画」に基づき、公園、保全地区及び街路樹の整備を進めてまいります。
水道事業については、十和田市上水道第7次拡張事業の完了を目指して取組を進めるとともに、新たに、焼山地区統合簡易水道整備事業に着手し、施設の一元化による管理と運営の効率化を図ってまいります。
また、水道施設の耐震化を着実に進め、ライフラインの機能強化を図り、安全で安心な水道水の安定供給に努めてまいります。
下水道事業については、処理施設の長寿命化計画に基づき、適切な更新を進めるとともに、引き続き十和田下水処理場の耐震補強工事に取り組んでまいります。
農村・農業環境の整備については、農地を保全し、多面的機能を維持するため、直接支払制度を広く活用するとともに、県営事業の中山間地域総合整備事業により、農業用用排水路・農道・集落道を整備してまいります。
道路整備については、計画的な整備を進めるとともに、適正な維持管理に努めてまいります。
また、主要地方道三沢十和田線の鉄道敷地を活用した整備拡充を県に対して要望してまいりますとともに、高清水地区交差点の改良事業に着手してまいります。
廃棄物対策については、「第2次十和田市ごみ減量行動計画」に基づき、ごみの減量化とリサイクルの推進を図り、循環型社会の形成に努めてまいります。
第2に、豊かな心をはぐくむ「こころ感動・創造都市」についてであります。
学校教育については、児童生徒の夢・希望・志の実現に向けて、新しい教育研修センターの積極的な活用を図りながら、学力向上対策や教育相談の充実を図るとともに、日本一を目指した特色ある教育活動の推進事業を全小・中学校で実施し、活気ある教育活動の展開に取り組んでまいります。
また、「十和田市いじめ防止基本方針」に基づき、全ての児童生徒が明るく楽しい学校生活を送ることができるよう、いじめの防止等の対策を総合的に進めてまいります。
学校施設の整備については、三本木中学校建設事業に着手するとともに、学校耐震化事業として、東小学校、十和田中学校及び第一中学校の耐震改修工事のほか、屋内運動場の非構造部材耐震化事業を実施してまいり ます。
また、市内全中学校のコンピュータ教室用パソコンの更新及び全小中学校の校務用パソコンの導入事業など、学校教育環境の整備に努めるとともに、引き続き、子ども夢チャレンジ基金による全国大会等の派遣補助を実施してまいります。
社会教育については、市民一人一人の学習意欲を支援し、学校・家庭・地域の連携による社会全体の教育力の向上に努めるとともに、青少年の郷土愛をはぐくみ、次代を担う人材育成の観点から、各種施策の充実に努めてまいります。
図書館事業については、参加者同士が本を紹介しあう子どもビブリオバトルを開催するなど、新しい市民図書館の機能を生かしながら、積極的な図書館活動を展開してまいります。
文化芸術の振興については、市民の発表、鑑賞機会の充実を図り、文化芸術活動を支援するとともに、文化財の保存及び活用に努めてまいります。
また、滝沢家寄贈資料の古文書の解読を行うなど郷土館及び十和田湖民俗資料館の整備・充実を図ってまいります。
社会体育については、志道館の耐震補強工事を実施するほか、市民一人一人がそれぞれの年代やライフスタイルに応じて、スポーツを楽しむことができるよう環境の整備に努めてまいります。
第3に、安心・安全を支える「くらし感動・創造都市」についてであります。
少子化対策については、安心して産み育てられるよう妊婦健診の費用助成と通院費用の一部助成を行うとともに、新たに不妊治療支援事業に取り組んでまいります。
病院事業については、市民の健康と生命を守るため、引き続き医師確保に努めながら、高度医療の充実と病院経営の安定化を図ってまいります。
国民健康保険事業については、被保険者数の減少などにより、厳しい事業運営が予想されることから、引き続き、医療費の適正化や特定健康診査の受診率向上等に努め、健全な運営を目指してまいります。
児童福祉については、「十和田市子ども・子育て支援事業計画」に基づき、認可外保育施設から認可保育所・小規模保育施設への移行により、保育の質及び機能を確保し、待機児童の解消に努めてまいります。
また、放課後児童クラブであります仲よし会においては、入所児童を6年生までに拡大し、児童の健全な育成を図る等、子ども・子育て家庭の支援に取り組んでまいります。
障害者福祉については、障害のある方々の地域社会における共生の実現に向け、日常生活や社会生活を支援するとともに、市民の理解を深めるための啓発事業を実施してまいります。
生活保護については、就労支援員を配置し、就労可能な生活保護受給者の自立を支援してまいります。
また、生活困窮者に対する相談窓口を設置し、生活保護に至る前に生活困窮状態からの早期自立に向けた支援をしてまいります。
高齢者福祉については、「第6期介護保険事業計画」の開始年度として、医療と介護の連携による地域包括ケアシステムの構築を図ることとし、高齢者自身が生き生きと暮らすことができるよう、生涯現役プロジェクト事業を展開し、閉じこもり予防や生きがいづくりを推進してまいります。
消費生活の安心・安全の確保については、広域の消費生活センターとして周辺市町村と連携し、安定した相談体制の確立を図るとともに、消費生活における被害の未然防止のため、消費者への意識啓発を推進してまいります。
防災については、市民の安全と安心を確保するため、緊急事態に適切に対処できる体制の強化や地域における防災意識と防災力向上に資する自主防災組織の充実を図ってまいります。
消防力の強化については、消防屯所の改築や消防団車両の更新に加え、消防団車両の無線のデジタル化を図るなど、資機材の整備や活動環境の改善を図ってまいります。
第4に、にぎわいと活力あふれる「しごと感動・創造都市」についてであります。
本市産業の基幹的な役割を担う農業については、農業政策の大転換に対応するため、認定農業者や営農組織及び新規就農・経営継承者を支援するなど、多様な地域農業の担い手の育成・確保に努めるとともに、小規模農家等対策や野菜のブランド化対策などの特別枠事業と合わせ農業所得の向上を図ってまいります。
とわだ産品の販売促進については、地方創生の先行型事業として、補正予算による対応とし、1次産品はもとより、付加価値の高い商品づくりに取り組むとともに、トップセールスによる販路の確保・拡大並びに地産地消の推進のための実践体制の強化を図ってまいります。
また、「十和田湖ひめます」については、本年1月、地域団体商標に登録されたことを契機に、ブランドの確立に向けた支援を一層強化してまいります。
畜産については、肉用牛主産地づくりによる優良繁殖牛の確保や家畜伝染病に対する防疫体制の強化を図るほか、北里大学との連携による畜産農家の低コスト飼料の自給率向上と肉用牛の飼養管理の確立を図ってまいります。
林業については、森林の有する多面的機能を総合的かつ高度に発揮させるため、適正な森林施業の実施により、健全な森林資源の維持増進を図ってまいります。
観光については、本市の主要な観光資源である十和田湖、奥入瀬、八甲田、現代美術館などの魅力を積極的に情報発信するとともに、関係市町村や関係団体との連携のもとに、交流人口の拡大を図ってまいります。
また、焼山地区活性化事業については、花と温泉とアートをテーマとした実施計画に基づく事業に着手し、雇用の場の確保や定住人口の増加を図ってまいります。
商工業の振興については、市民生活を支える活力ある産業の創出を目指し、引き続き企業の立地動向の把握に努めるとともに、企業誘致支援大使と連携しながら企業誘致に取組み、雇用の創出に努めてまいります。
中心市街地の活性化については、空き店舗への新規出店に意欲のある方に対し支援してまいります。
第5に、いきいきと活躍できる「しみん感動・創造都市」についてであります。
市民活動については、本市における自治の基本理念、まちづくりを進めていくための基本的なルールを定めた「十和田市まちづくり基本条例」に基づき、市民・議会・行政の連携、協働による市民主体のまちづくりに努めてまいります。
また、地域コミュニティ組織の強化や地域活動の活性化を目指し、平成26年度から実施しております地区担当職員制度のより一層の浸透を図り、地域の実情把握や 課題の共有に努めてまいります。
交流の促進については、姉妹都市の高知県土佐町をはじめ、友好都市である岩手県花巻市などとの交流を推進してまいります。
行政改革については、平成27年度を初年度とする「第3次行政改革大綱」に基づき、広域的連携を図りながら安定した行政経営を行い、民間活力の活用等により、効率的で効果的な行政運営に取り組んでまいります。
また、市民への説明責任や職員の事務事業に対する意識向上を目的として行う外部評価を含めた事務事業評価を実施し、評価の客観性及び信頼性の向上と成果重視の市政運営に努めてまいります。
最後に、平成27年度の財政見通しについてであります。
社会保障関連経費の増大が続く中、長引く景気の低迷からの脱却に明るい兆しが見られ、また、国における地方交付税の総額も一定程度確保されたことを背景に、本市の財政状況は、歳入面においては市税の伸びや地方消費税交付金の増額が見込まれるなど、一般財源の総額は増額確保となる見通しであります。
歳出面においては、国の補正予算を活用するなど、特定財源も想定以上に確保できる見通しであります。
また、予算規模においては、(仮称)教育プラザの予算措置の終了に伴い、縮小となっております。
この結果、一般会計予算の歳入歳出総額は、前年度比2.0%減の290億7,000万円となり、財政調整基金からの繰入額は、前年度から6億1,883万1,000円減の8億604万5,000円となりました。
また、地方債残高も平成27年度末において、前年度から18億9,979万6,000円減の295億5,000万5,000円の見込みとなっております。
しかしながら、本市の財政運営においては、今後も続くものと予想される社会保障費の増大や病院事業への対応、公共施設等の老朽化対策など大きな課題を抱えており、加えて、合併算定替終了に伴う地方交付税の減少も見込まれることから、今後の財政見通しは、依然として厳しい状況にあるものと認識しております。
今後も、厳しさが増す財政環境にありますが、行財政改革を推し進めながら公営企業会計を含めた市全体の 財政運営を勘案し、「感動・創造都市」の実現を目指してまいります。