平成28年第1回十和田市議会定例会(2月26日開会)において、小山田市長が平成28年度の施政方針を述べました。
※ 施政方針とは
市長の市政運営に対する基本的な考え方や主要な施策などについて述べたものです。
※ 本文書は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干変更があります。
平成28年第1回十和田市議会定例会の開会に当たり、所信の一端並びに市政運営の基本方針を申し述べます。
昨年10月に開催された「B-1グランプリin十和田」では、市民一丸となったおもてなしが高い評価をいただきました。改めて「市民力」を実感したところであり、今後のまちづくりに大いに活かしながら、本市の更なる発展と諸課題の解決に向け、関係各位をはじめ市民の皆様とともに、「元気な十和田市づくり」に邁進してまいる所存であります。
我が国の社会経済情勢は、人口減少・少子高齢化社会の到来により、様々な問題を抱え、今後、これらの課題がさらに深刻化していくことが懸念されています。
本市におきましても、人口がこのままの状況で推移した場合、経済活動の縮小やコミュニティ機能の低下などを招き、地域の抱える課題がますます多様化・高度化することが見込まれております。
このようなことから、先般、産官学金労言といった様々な立場の方々からのご意見・ご提言を踏まえた、十和田市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略を策定し、将来にわたり持続可能な地域を目指し、移住・定住対策や少子化・子育て支援、地域経済の維持・増進などをはじめとする各種施策に取り組んでまいります。
こうした思いのもと、はじめに、平成28年度の主要施策の中で特に申し上げたい事項についてご説明いたします。
平成28年度は、市の将来、まちの在り方、まちづくりの進め方を決める重要な計画の策定に取り組んでまいります。
その一つが、本市の最上位計画に位置付けられる総合計画であります。
現在の総合計画は、平成28年度末に計画期間が満了することから、平成29年度を初年度とする次期総合計画の策定作業を進めてまいります。
そして、公共施設等総合管理計画であります。
公共施設の老朽化対策については、今後の公共施設のあり方に関する方針を定め、長期的な視点をもって施設の更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行ってまいります。
建設から50年を経過しました市役所本館の建て替えについては、市民の皆様が使いやすい庁舎となるよう、平成31年度の完成に向け実施設計に着手するとともに、三本木中学校建設事業についても実施設計に着手してまいります。
また、本年は、十和田八幡平国立公園の指定80周年の年でありますことから、記念事業への支援を行ってまいります。
さらに、3月の北海道新幹線の開業も視野に入れ、インターネット等の多様な媒体を活用し、国内外に本市の魅力を積極的に情報発信することにより、国内はもとより海外からの観光客の更なる誘客を促進するなど、地域の活性化と観光振興を図ってまいります。
次に、地方創生特別枠予算による取組をご説明させていただきます。
地方創生に関する施策を着実に進展させるための特別枠については、先ほども申し上げました十和田市まち・ひと・しごと創生「総合戦略」に掲げた4つの基本目標に基づき、41の事業に取り組んでまいります。
1つ目の基本目標であります「地域における安定した雇用を創出する」取組としては、新規就農・経営継承者を支援するなど、多様な地域農業の担い手の育成・確保に努めるとともに、野菜のブランド化対策により付加価値の高い農産物の生産・出荷に取り組んでまいります。
また、電子商取引などインターネットによる販売参入支援、立地奨励措置拡充による企業立地の促進に取り組むとともに、創業支援の充実による産業の創出、「インバウンド対策・日本版DMOの推進」や「焼山地区活性化」等による観光地域づくりを進め、雇用の増大につなげてまいります。
2つ目の基本目標であります「地域への新しいひとの流れをつくる」取組としては、市外からの新規就農者を確保する「移住・定住就農支援」や圏域外からの転入者に対する「住宅取得・改修支援」、空き家バンクの活用による「若者世代定住」等を推進し、定住者の増加に努めてまいります。
また、移住セミナーやお試しツアーの開催、お試し住宅の整備等により、引き続き、移住を検討する方への情報発信を行ってまいります。
3つ目の基本目標であります「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」取組としては、一部所得による制限は設けるものの、中学生までの子どもの通院・入院医療費の無料化と、国や県の制度を活用した第3子以降の保育料の無料化に取り組み、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ってまいります。
また、放課後児童クラブであります仲よし会については、新規開設や時間延長により、子どもを安心して育てられる環境づくりに努めてまいります。
4つ目の基本目標であります「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」取組としては、市民一人ひとりの運動習慣定着を図る「健康とわだエンジョイウォーク」や「健康とわだポイントラリー」の拡充、食生活改善等の取組により生活習慣病の予防対策を推進するとともに、介護支援ボランティアポイントや、生涯現役プロジェクト等の取組による地域の介護予防活動を支援し、高齢者が生きがいを持ち、安心して暮らせる環境づくりに努めてまいります。
また、新たなコミュニティづくりやまちづくりのための人材育成に努め、地域と地域の連携を深め、地域コミュニティの強化及び地域活動の活性化を図ってまいります。
このほか、十和田産品の情報発信、販路拡大や加工品づくりの拠点整備をはじめとする「地域内連携による6次産業化の支援」については、国の補正予算に伴う地方創生加速化交付金を活用し、本市の平成27年度補正予算案に計上して取り組むことにより、事業効果の早期発現に努めてまいります。
こうした本市の総合戦略をより効果的・重点的に取り組んでいくため、市の組織の一部を見直し、新たに「こども子育て支援課」を設置することにしました。
また、地方創生の担当部署に、出会いから結婚までの総合窓口の機能を持たせ、地方創生・人口減少対策への取組強化を図ってまいります。
以上、平成28年度における主要な施策について申し述べましたが、市の諸施策につきましては、「十和田市総合計画」におけるまちづくりの基本目標に沿ってご説明いたします。
第1に、人と自然が共生する「しぜん感動・創造都市」についてであります。
市街地の良好な環境づくりについては、「みどりの管理計画」に基づき、公園、保全地区及び街路樹の適正な管理に努めてまいります。
水道事業については、十和田市上水道第7次拡張事業の完了を目指すとともに、焼山地区統合簡易水道整備事業の取組を進め、施設の一元化による管理と運営の効率化を図ってまいります。
また、導水管の耐震化を着実に進め、ライフラインの機能強化を図ることにより、安全で安心な水道水の安定供給に努めてまいります。
下水道事業については、管渠整備を進めるとともに、十和田下水処理場及び農業集落排水処理施設の設備更新や、耐震補強工事に取り組んでまいります。
また、十和田下水処理場における「し尿・浄化槽汚泥共同処理」については、十和田地区環境整備事務組合と協議検討を進めてまいります。
農村・農業環境の整備については、農地を保全し、多面的機能を維持するため、直接支払制度を広く活用するとともに、県営事業の中山間地域総合整備事業により、農業用用排水路、農道、集落道を整備してまいります。
道路整備については、計画的な整備を進めるとともに、適正な維持管理に努めてまいります。
また、広域的な物流の拡大と災害時等における緊急搬送の効率化を図るため、東北縦貫自動車道弘前線のある秋田県小坂町から、本市を経由し八戸市の東北縦貫自動車道八戸線までを横断する区間について、地域高規格道路の指定を国に要望してまいります。
廃棄物対策については、「第2次十和田市ごみ減量行動計画」に基づき、ゴミの減量化とリサイクルの推進を強化し、循環型社会の形成に努めてまいります。
また、市内全域の防犯灯・街路灯のLED化に取り組み、省エネルギー化を推進するとともに、資源の有効活用に努めてまいります。
第2に、豊かな心をはぐくむ「こころ感動・創造都市」についてであります。
学校教育については、児童生徒の夢・希望・志の実現に向けた、きめ細かな学力向上対策に取り組むとともに、日本一を目指した特色ある教育活動の推進事業を更に充実させるなど、より活気に満ちた教育活動の展開を図ってまいります。
また、新たに学校運営協議会制度を導入し、コミュニティ・スクールを中心に地域が一体となった体制づくりを進め、学校が地域コミュニティの拠点として、地域の将来の担い手となる人材を育成する役割を果たしていけるように支援してまいります。
学校施設の整備については、引き続き、屋内運動場の非構造部材の耐震化に取り組んでまいります。
また、特別な支援を必要とする子どもたちのため、教育支援員による校内支援の充実を図るとともに、引き続き、子ども夢チャレンジ基金による全国大会等への派遣支援を実施してまいります。
社会教育については、市民の学習意欲を支援し、学校・家庭・地域の連携による社会全体の教育力の向上に努めるとともに、次代を担う人材育成の観点から、各種施策の充実に努めてまいります。
市民図書館については、地域を支える学習及び情報拠点の場となるよう、「家庭読書の日」の普及・啓発や読書活動の推進に取り組みながら、積極的に図書館としての役割を果たしてまいります。
文化芸術の振興については、市民の発表、鑑賞機会の充実を図り、文化芸術活動を支援するとともに、文化財の保存及び活用に努めてまいります。
また、滝沢家寄贈の古文書の解読等に取り組むとともに、郷土館及び十和田湖民俗資料館の充実を図ってまいります。
社会体育については、8月に本市で開催される「第43回東北総合体育大会」において4競技を支援するほか、市民一人ひとりがスポーツに関心を持ち、それぞれの年代やライフスタイルに応じてスポーツを楽しむことができる環境の整備に努めてまいります。
第3に、安心・安全を支える「くらし感動・創造都市」についてであります。
少子化対策については、安心して産み育てられるよう妊婦健診の費用助成と通院費用の一部助成を行うとともに、特定不妊治療支援に取り組んでまいります。
病院事業については、市民の健康と生命(いのち)を守るため、引き続き、医師確保に努めながら、医療の質的向上と病院経営の安定化を図ってまいります。
国民健康保険事業については、被保険者数の減少や医療単価の高騰などにより、厳しい事業運営が予想されることから、引き続き、医療費の適正化や特定健康診査の受診率向上等に努め、健全な運営を目指してまいります。
児童福祉については、子育て世帯の経済的負担の軽減を図るとともに、子どもたちが健やかに成長できるよう、地域における子ども・子育て支援体制の充実に努めてまいります。
障害者福祉については、障害のある方々の地域社会における共生の実現に向け、日常生活や社会生活を支援するとともに、市民の理解を深めるための啓発事業を実施してまいります。
生活保護については、適切な保護の実施とともに、受給者の就労や自立の促進を図ってまいります。
また、生活困窮者については、一人ひとりの状況に応じた相談支援や就労支援などにより、生活困窮状態からの早期自立に向けた支援を行ってまいります。
高齢者福祉については、高齢者が可能な限り住み慣れた地域において自立した日常生活を営むことができるよう介護予防事業の拡充を図り、住民相互の助け合いや社会参加など高齢者の活躍の場づくりを推進するとともに、見守り体制や相談体制の充実に努めてまいります。
消費生活の安全・安心の確保については、消費生活センターにおいて、定住自立圏構成市町村と連携し、安定した相談体制の確立を図るとともに、消費生活における被害の未然防止のため、消費者への意識啓発を推進してまいります。
すべての市民が安全・安心を実感できるまちづくりについては、事故やけがは予防できるという理念のもと、市民・関係機関等との協働によるセーフコミュニティに継続して取り組んでまいります。
防災については、市民の安全と安心を確保するため、自主防災組織の充実や地域防災計画の見直しなど、緊急事態に適切に対処できる体制の強化を図ってまいります。
消防力の強化については、消防屯所の改築、消防車両の更新を順次行うとともに、資機材の整備など、活動環境の改善を図ってまいります。
第4に、にぎわいと活力あふれる「しごと感動・創造都市」についてであります。
本市産業の基幹的な役割を担う農業については、農業用機械等の導入支援などの取組により、生産性の向上と経営感覚に優れた担い手の育成に努め、農業所得の向上を図るとともに、国や県と軌を一にしながら、TPP対策に取り組んでまいります。
農業の次代の担い手である農業後継者については、農業体験交流会等の開催を通した出会いの場の創出により、結婚への支援をしてまいります。
とわだ産品の販売促進については、豊富で魅力的な1次産品の強みを生かして、付加価値の高い商品づくりに取り組むとともに、地域内連携による6次産業化の推進とトップセールスによる販路の確保・拡大のための実践体制の強化を図ってまいります。
また、「十和田湖ひめます」については、ブランドの確立・保持のための支援を継続してまいります。
畜産については、肉用牛の主産地づくりをより強化するため、優良繁殖牛の地元への保有確保を図る取組を支援してまいります。
林業については、森林の有する多面的機能を総合的かつ高度に発揮させるため、適正な森林施業の実施により、健全な森林資源の維持増進を図ってまいります。
観光については、本市の主要な観光資源である十和田湖、奥入瀬、八甲田、現代美術館などの魅力を積極的に情報発信するとともに、関係市町村や関係団体との連携のもとに、交流人口の拡大を図ってまいります。
雇用の創出については、創業希望者に対する包括的な支援体制を充実させるとともに、若年者等の人材育成研修やUIJターン就職者に対する支援をしてまいります。
また、地域における安定した雇用を創出するため、企業誘致支援大使と連携しながら企業誘致に取り組んでまいります。
商工業の振興については、中心市街地の活性化について、核となりうる重点事業の調査・検討をしてまいります。
第5に、いきいきと活躍できる「しみん感動・創造都市」についてであります。
市民活動については、本市における自治の基本理念、まちづくりを進めていくための基本的なルールを定めた「十和田市まちづくり基本条例」に基づき、市民・議会・行政の連携、協働による市民主体のまちづくりに努めてまいります。
交流の促進については、姉妹都市の高知県土佐町をはじめ、友好都市である岩手県花巻市などとの交流を推進してまいります。
行政改革については、「第3次行政改革実施計画」に基づく取組を着実に進め、効果的かつ効率的な行政経営の実現を図るとともに、引き続き、外部評価を含めた事務事業評価を実施し、評価の客観性及び信頼性の向上と成果重視の市政運営に努めてまいります。
最後に、平成28年度の財政見通しについてであります。
本市においては、これまで行財政の効率化や経費の節減に努め、持続可能な財政基盤の構築に取り組んでおり、ここ数年は「基金に頼らない財政運営」が可能となっております。
しかしながら、少子高齢化や人口減少社会の進展による社会保障関連経費の増大や新庁舎・三本木中学校の建設、公共施設等総合管理計画に基づく公共施設の再編整備といった大きな課題を抱えていることに加え、合併算定替終了に伴う地方交付税の減少が見込まれるなど、今後の財政見通しは依然として厳しい状況にあるものと認識しております。
このような状況を背景に、平成28年度の予算編成にあたっては、「基金に頼らない財政運営」を基本に据え、今後の公共施設の老朽化対策や再編整備に必要な財源を留保しつつ、引き続き政策実現を着実に進めるための特別枠を設け、「地方創生」に向けた取組を最重要事項としております。
この結果、一般会計予算の歳入歳出総額は、前年度比0.2%減の290億円となり、財政調整基金からの繰入額は前年度から1,203万円減の7億9,401万円となりました。
また、地方債残高も平成28年度末において、前年度から19億4,841万円減の279億6,008万円の見込みとなっております。
今後も、厳しさが増す財政環境にありますが、市民の誇りとして受け継がれてきた地域資源を生かしながら、魅力あふれるまちづくりに邁進し、「感動・創造都市」の実現を目指してまいります。