平成30年第1回十和田市議会定例会(2月28日開会)において、小山田市長が平成30年度の施政方針を述べました。
※ 施政方針とは
市長の市政運営に対する基本的な考え方や主要な施策などについて述べたものです。
※ 本文書は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干変更があります。
平成30年第1回十和田市議会定例会の開会に当たり、所信の一端並びに市政運営の基本方針を申し述べます。
私が、市長に就任して、今年で10年の節目を迎えることとなりました。この間、市民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力を賜りながら、「元気な十和田市づくり」に誠心誠意取り組んでまいりました。引き続き、強い使命感を持って、さらなる前進を目指し、市の発展に尽力する所存であります。
さて、我が国の社会経済情勢に目を向けてみますと、緊迫の度合いを増す北朝鮮情勢や環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の大筋合意など、安全保障や国際経済に係る大きな課題を抱えております。
一方、国内経済は、企業投資も増え、大手企業を中心に回復基調にあるほか、47都道府県すべてにおいて有効求人倍率が1倍を超えるなど、地方においても景気回復の兆しが見えてきております。
こうした中、本市では、人口減少や少子化・超高齢社会への対応、地域経済の維持増進、観光振興、公共施設の整備など、取り組むべき多くの課題が山積しております。
これらの課題の解決を図り、市の最上位計画である「第2次総合計画」に掲げる将来都市像「~わたしたちが創る~希望と活力あふれる 十和田」を実現するため、これまで以上に関係各位をはじめ市民の皆様と連携・協働を図りながら、将来にわたり持続可能な地域を目指し、各種施策に取り組んでまいります。
こうした思いのもと、平成30年度の主要施策の中で特に申し上げたい事項についてご説明いたします。
はじめに、本市における喫緊の課題であります人口減少・少子化に対応するため、「まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略」に基づき、移住・定住対策や観光振興、結婚、子育て支援をはじめとする地方創生事業に引き続き取り組んでまいります。
特に、地域への新しい人の流れをつくる取組としては、転入者に対する「住宅取得・改修支援」、空き家バンクの活用、移住お試し住宅の整備などにより、移住・定住者の増加に努めてまいります。
観光については、「国立公園満喫プロジェクト」における具体的な取組を示す「十和田八幡平国立公園ステップアッププログラム2020」に基づき、国立公園のブランド化とインバウンド対策等の取組による訪日外国人旅行客の誘客を促進してまいります。
さらに、日本版DMOの設立に向けた取組を推進し、観光を軸として地域資源を活用することにより、地域が稼ぎ続ける仕組みをつくりだし、観光を含めた地域内総生産額の増大を目指してまいります。
また、昨年11月に内閣府から認定を受けた地域再生計画「冬季観光充実・強化による地方創生推進プロジェクト」に基づき、奥入瀬渓流氷瀑ツアーなどを通して、本市の課題である冬季の誘客促進と観光振興を図ってまいります。
次に、人口減少社会や2025年の超高齢社会を見据え、子どもから高齢者まで誰もが地域で安心して住み続けることのできる地域共生社会の実現に向けて、保健・医療・福祉分野における各種支援サービスの充実と体制づくりに取り組むのはもちろんのこと、市民の主体的な活動や地域づくりを支援するとともに、地域公共交通の確保などに取り組んでまいります。
このため、高齢者が地域において自立した日常生活を営むことができるよう、「第7期高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、医療機関、介護事業所など多様な主体との協働、連携により高齢者一人ひとりの状況に応じて、包括的かつ継続的に支援していくため、地域包括支援センターを3か所設置することにより、機能強化を図り、自立支援と介護予防、重度化防止の推進に取り組んでまいります。
また、高齢者の社会参加の促進を図るとともに、認知症施策を推進し、見守り体制の充実に努めてまいります。
地域づくりについては、多様化、複雑化する地域ニーズに対応するため、コミュニティ組織の広域化及び地域コーディネーター等の人材育成により、地域コミュニティ機能の維持・増進を図るとともに、「市民活動支援係」と「市民活動支援係」をコミュニティセンターとして地域コミュニティの拠点に位置付け、コミュニティ活動の促進を図ってまいります。
このほか、中心市街地における公共交通の利便性や運転が困難になった高齢者などに配慮し、郊外から中心市街地へのアクセスの向上を図るため、交通拠点や停留所の利用状況の調査として市街地循環バスの実証運行に取り組んでまいります。
次に、次世代を担う子どもたちの環境の充実については、新学習指導要領の先行実施に基づき、特に英語教育のさらなる充実に向け、外国語指導助手(ALT)を増員するなど、教育環境の整備に努めるとともに、引き続き、日本一を目指した特色ある教育活動の推進に取り組んでまいります。
また、特別な配慮を必要とする子どもたちについては、特別支援教育支援員を増員するほか、保健センターにおいても新たな取組を始めるなど、支援体制の充実に努めてまいります。
次に、公共施設の整備事業についてであります。
市役所新庁舎については、本市における防災・災害対応拠点として、平成31年度の開庁に向け建設工事を進めてまいります。
さらに、防災機能を兼ね備えた(仮称)屋内グラウンド建設に係る基本設計、実施設計等を実施するほか、(仮称)志道館建設のための基本構想策定に取り組んでまいります。
老朽化や耐震性に問題のある公共施設については、市民が安全・安心で快適に利用できる環境を確保するため、施設の耐震化・改修及び更新・統廃合、解体などを計画的に行ってまいります。
そのほか、地域医療の推進については、「十和田市立中央病院新改革プラン」に基づき、医療の質の向上や病院経営の安定化を図り、医師確保に向け、引き続き関連大学へ働きかけるとともに、医師住宅の整備に取り組んでまいります。
以上、主要な施策について申し述べましたが、市の諸施策につきましては、「第2次総合計画」に掲げる基本目標に沿ってご説明いたします。
基本目標1は、市内外からより多くの人々や消費を呼び込めるまち(産業振興)についてであります。
農業の振興については、新規就農者等への支援や農業後継者の婚活支援など、農業の担い手の育成・確保に努めるとともに、主要農産物を中心に品質・生産性の向上、収益力の強化を図ってまいります。
さらに、昨年3月に制定した「食と農の推進条例」に基づき、安全で安心な農産物の生産供給と販売及び消費の拡大、地産地消の普及・啓発に取り組んでまいります。
また、生産効率の向上を図るため、ほ場の区画整理に取り組むほか、農地等の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消など、農地等の利用の最適化に取り組んでまいります。
とわだ産品の販売促進については、本市の豊富で魅力的な1次産品の強みを生かした付加価値の高い商品づくりや6次産業化を支援するとともに、にんにくをはじめとする主要4野菜や十和田湖ひめます、十和田湖和牛などのブランドイメージを保全・強化し、販路拡大を図ってまいります。
畜産については、県内一の生産量を誇る肉用牛の主産地づくりを強化するため、新たな血統となる優良繁殖雌牛の導入を支援してまいります。
林業については、森林の集約化など適切な森林整備等の推進に向け林地台帳を整備するとともに、再造林を支援するなど、森林資源の維持増進を図ってまいります。
観光力の強化と充実については、十和田八幡平国立公園の美しく雄大な自然環境をはじめ、官庁街通り、今年開館10周年を迎える現代美術館など、観光資源の付加価値向上に取り組むとともに、これらの多彩な観光資源を複合的に結び付けた観光コンテンツの開発に努め、滞在時間の延長や観光消費の拡大に結び付けてまいります。
また、国内外からの観光客の受入体制の充実を図るため、引き続き、観光施設の無料公衆無線LANの整備を進めてまいります。
商業・サービス業の振興については、創業希望者に対する包括的支援体制の充実を図るとともに、「第2期中心市街地活性化基本計画」の策定に向けて取り組んでまいります。
産業力の強化については、企業誘致支援大使と連携し、地域に根ざした企業の誘致活動を積極的に推進するとともに、中小企業の重要性や関係機関の役割等を明確にすることで、市全体で中小企業の振興に努めてまいります。
雇用の安定については、UIJターン就職者に対する奨励金の交付をはじめ、若年者の資格取得、女性や高齢者の就業等を支援するなど、安心して働くことのできる環境づくりに取り組んでまいります。
基本目標2は、地域全体で子育て・子育ちをしっかりと支えるまち(子育て・教育)についてであります。
子育て支援の充実については、保育料の軽減や医療費の助成などを通じ、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ることにより、安心して子どもを産み育てられる環境づくりに努めてまいります。
また、特定不妊治療の費用を一部助成することにより、子どもを産み育てたいと願う夫婦への支援をしてまいります。
母子保健については、妊産婦相談支援事業の拡充のほか、乳幼児に対する相談・支援体制の整備など、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援体制の充実を図ってまいります。
また、子どもや家庭をめぐる問題の多様化、複雑化に対応できるよう、関係機関及び地域社会との連携・協力のもと、家庭相談員による、よりきめ細かな助言・指導に努めてまいります。
学校教育の充実については、アシスタント・ティーチャーの学校派遣などの教科指導支援及び地域教材や新聞を活用した学習支援を引き続き行うことにより、児童・生徒一人ひとりの「確かな学力」、「豊かな人間性、自己指導能力の育成」、「夢・希望・志」の育成に取り組んでまいります。
学校施設の整備については、三本木中学校の校舎建設並びに市内小・中学校の大規模改修及び屋内運動場非構造部材の耐震化などに取り組んでまいります。
また、就学援助制度の拡充に取り組むことにより、保護者の経済的な負担軽減を図ってまいります。
家庭教育については、家庭における教育力の向上に取り組むとともに、「学校運営協議会」を通して、地域全体で子どもたちを育てる機運を醸成してまいります。
基本目標3は、すべての市民が健やかに暮らせるまち(健康・福祉)についてであります。
健康づくりの推進については、健診受診のきっかけづくりとして、満40歳のがん検診の受診料を無料とするほか、インターネットを利用した健診予約システムの導入や「健康とわだポイントラリー」、「企業への健康づくり応援事業」の実施により、市民の各種健診等の受診率向上及び運動習慣の定着を図るとともに、糖尿病の発症及び重症化の予防の取組を促進してまいります。
また、自殺対策計画の策定に取り組むことにより、こころの健康に関する正しい知識の普及・啓発と互いに支え合う地域づくりを推進するとともに、適切な支援を受けることができるよう、ゲートキーパーの養成を推進し、相談体制の充実を図ってまいります。
障害者福祉については、福祉サービスの提供体制の充実や障害者に対する差別解消のための理解促進、障害者の虐待防止に向けた普及・啓発に努めてまいります。
地域福祉の推進については、「地域福祉計画」の「みんなで支える共生のまち・とわだ」の理念に基づき、地域での支え合いや市民の福祉に対する意識の醸成に努めてまいります。
生活保護については、適切な保護を行うとともに、就労が可能な受給者の自立を支援してまいります。
また、生活困窮者については、相談支援や就労支援などにより、一人ひとりの状況に合わせた自立に向けた支援に努めてまいります。
国民健康保険事業については、糖尿病性腎症重症化予防対策等により医療費支出の適正化を図るとともに、保険税の収納率向上等による収入の確保に努め、安定的な運営を図ってまいります。
基本目標4は、だれもが楽しく学び、豊かな心と文化が息づくまち(生涯学習・文化・スポーツ)についてであります。
生涯学習の推進については、各種事業の見直しを図りながら、市民のライフステージに応じた「学び」を支援する取組のさらなる充実に努め、活力ある地域社会の創造を目指してまいります。
また、市民図書館については、読書活動の推進に積極的に取り組み、地域を支える情報拠点の場としての役割を果たしてまいります。
文化芸術の振興については、市民の発表、鑑賞機会の充実を図り、文化芸術活動を支援するとともに、文化遺産の保存及び活用に努めてまいります。
スポーツ活動の充実については、アネックス・スポーツランドをはじめとした体育施設の改修に取り組むなど、市民が暮らしの一部としてスポーツに親しむことのできる環境の整備に努めてまいります。
基本目標5は、地域で助け合い、災害に強く犯罪のない、安全・安心なまち(安全・安心)についてであります。
防災体制の整備については、緊急事態に適切に対処できる体制の強化を図るため、市内全域に情報を伝達できる同報系防災行政無線の整備に取り組むとともに、地域における防災力向上のため自主防災組織の充実を図ってまいります。
消防・救急体制の整備については、十和田地域広域事務組合において十和田湖消防署の建替えに着手するほか、消防団車両や消防屯所の計画的な更新を行うとともに、資機材の整備など、活動環境の向上を図ってまいります。
すべての市民が安全・安心に暮らすことができるまちづくりについては、事故やケガは予防できるという理念のもと、市民・関係機関等との協働によるセーフコミュニティ活動の推進に継続して取り組んでまいります。
また、都市間交流事業の推進や市民・大学とのネットワーク形成など、多様な交流を推進してまいります。
空き家の利活用対策の推進については、空き家等による治安や生活環境の悪化を防ぐとともに、空き家等の活用を促進するため、「空家等対策計画」を策定し、総合的かつ計画的に施策を実施してまいります。
消費生活の安全・安心の確保については、消費生活センターを活用し、安定した相談体制の確立を図るとともに、消費者への意識啓発を推進してまいります。
基本目標6は、ゆとりと潤いあふれる暮らしを実感できるまち(環境)についてであります。
生活環境の充実については、「みどりの管理計画」に基づき、公園、保全地区等の適正な管理に努めてまいります。
ごみ処理の適正化については、「第3次ごみ減量行動計画」に基づき、市民・事業者・行政が協働で、ごみの発生抑制、再使用、再生利用に積極的に取り組むことにより、より一層ごみの減量化・資源化を推進し、循環型社会の形成に努めてまいります。
基本目標7は、快適な暮らしや活発な経済活動を支える都市基盤が整ったまち(都市基盤)についてであります。
都市基盤の形成については、「立地適正化計画」等に基づき、持続可能でコンパクトなまちづくりを目指してまいります。
また、市営住宅の長寿命化に取り組むとともに、既に耐用年数を経過した金崎A団地、金崎B団地及び上平団地の建替えについては、PFIによる整備に向けた取組を進めてまいります。
農村集落については、地域の特性を生かしたコミュニティの推進を図るとともに、農地及び農道・農業用用排水路等の農業用施設の管理・保全を通して、持続的な農村環境の維持に努めてまいります。
道路及び橋梁の整備については、計画的な整備を進めるとともに、定期的な点検及び計画的な修繕を実施するなど、適正な維持管理に努め、長寿命化を図ってまいります。
また、主要地方道三沢十和田線の渋滞解消や地域高規格道路等の整備促進について、関係機関に要望してまいります。
水道事業については、引き続き「水道事業全体基本計画」の策定に取り組み、水道施設の老朽化対策を図るとともに、安全で安心な水道水の安定供給に努めてまいります。
下水道事業については、持続的な汚水処理システムの構築に向けて、「汚水処理施設整備構想」の策定に取り組んでまいります。
また、十和田下水処理場における「し尿・浄化槽汚泥共同処理」については、十和田地区環境整備事務組合と協議を行いながら汚泥処理施設の整備を進めてまいります。
基本目標8は、地域経済社会の持続的な発展を支える強固な経営基盤が確立したまち(自治体経営)についてであります。
女(ひと)と男(ひと)がともに輝くまちづくりの推進については、「第2次男女共同参画社会推進計画実施計画」に基づく取組を進めることにより、性別・年齢に関わりなく、個人として尊重され、個性と能力を十分に発揮することができる環境を整えてまいります。
行政改革については、「第3次行政改革実施計画」に基づく取組を着実に進め、効果的・効率的な行政経営の実現を図るとともに、外部評価を含めた事務事業評価を実施することにより、評価の客観性及び信頼性の向上と成果重視の市政運営に努めてまいります。
行政運営の効率化の推進については、多様化・高度化する市民ニーズに対応し、市民サービスのより効果的・効率的な提供に努めるため、新たに室を設置するなど、行政組織の見直しを行うとともに、職員の資質向上を図ってまいります。
最後に、平成30年度の財政見通しについてであります。
平成30年度の予算編成に当たっては、地方創生の考え方を包含した第2次総合計画の基本構想に掲げる将来都市像の実現に向けた取組を着実に進めるため、より一層の選択と集中を行いつつ、特に、前期基本計画における重点プロジェクト及び総合戦略掲載事業、公共施設等総合管理計画に基づく建設等事業について、重点化を図っております。
この結果、一般会計予算の歳入歳出総額は、前年度比7.3パーセント増の321億5,000万円となり、財政調整基金からの繰入額は前年度から3億8,391万6,000円増の10億5,566万5,000円となりました。
また、地方債残高も平成30年度末において、前年度から12億9,523万7,000円増の300億2,766万円の見込みとなっております。
今後も、少子高齢化や人口減少社会の進展による市税等の伸び悩み、社会保障関連経費、公共施設整備等関連経費の増大など、財政を取り巻く環境は、厳しい状況にありますが、多彩な地域資源を生かしながら、市民と協働のまちづくりを推進することにより、より多くの人々から「住みたい」、「住み続けたい」、「訪れたい」まちとして強く支持されるよう、魅力に満ちたまちの創出に邁進してまいります。