十和田市の訴訟状況

1 市が原告の訴訟(市が提訴したもの)令和6年4月1日現在

提訴日 事件名 相手方 内容 状況
令和2年8月11日 建物明渡等請求事件 個人 廃止となった旧十和田市立新渡戸記念館の明渡し及び賃料相当額の請求

令和5年12月28日

調停成立

2 市が被告の訴訟(市が提訴されたもの)令和6年4月1日現在

提訴日 事件名 相手方 内容 状況
平成21年11月4日 固定資産評価審査決定取消請求事件 法人 固定資産評価審査委員会が行った固定資産価格決定の取消請求

平成25年1月22日

市勝訴

平成27年6月26日 条例廃止処分取消請求事件 個人 旧十和田市立新渡戸記念館の廃止条例処分取消の請求

令和元年12月3日

市勝訴

令和元年8月31日 固定資産評価審査決定処分取消等請求事件 個人 固定資産評価審査申出に係る固定資産評価処分決定の取消及び損害賠償請求

令和元年6月1日

市勝訴

令和2年8月31日 審査請求棄却処分取消等請求事件 個人 固定資産評価審査委員会による審査請求棄却処分の取消及び損害賠償請求

令和5年3月6日

市勝訴

令和2年9月1日 損害賠償請求事件 個人 適切な医療処置を行わなかった過失に対する損害賠償請求

令和4年4月22日

市勝訴

令和3年11月11日 慰謝料請求事件 個人 市民図書館職員の図書館利用者への注意等行為に対する慰謝料請求

令和5年3月20日

市勝訴

注 1及び2については、平成17年1月1日合併後の十和田市の状況を掲載しています。


特記事項(令和6年10月末時点)

 令和5年12月28日に調停成立した事件に係る調停条項により定められた双方の履行義務について、市の対応・進捗状況についてお知らせします。(個人名については、アルファベットで表示)

 平成26年度において市が実施した耐震診断において、本件建物が倒壊の危険性があるとの結果を勘案し、議会の議決を経て平成27年6月26日に十和田市立新渡戸記念館を廃止したところ、この廃止処分の取り消しを求め、Aが同年6月30日に青森地方裁判所へ提訴した行政訴訟が始まりとなります。
平成29年1月27日、Aには原告適格(※1)等がないとして青森地方裁判所でAの訴えが却下(※2)されたものの、同年年6月23日控訴審である仙台高等裁判所において、原判決が取り消され、青森地方裁判所へ差戻し(※3)となりました。
 差戻し審では、平成30年11月2日、青森地方裁判所でAの請求が棄却(※4)、令和元年7月10日、控訴審である仙台高等裁判所において同様に棄却、同年12月3日、最高裁判所が上告を棄却する決定をし、判決が確定しました。
 この結果、裁判においては十和田市立新渡戸記念館の廃止が確定し、市が実施した耐震診断には合理性が認められ、これを基に、建物を維持することができず、取り壊すしかないと市が判断したことに不合理な点はなく、新渡戸記念館の廃止は、民主的基盤を有する廃止条例によって行われたものであるとともに、新渡戸記念館の廃止には合理的理由があると認められました。

 その後、令和2年1月20日、Aが十和田簡易裁判所に対し、旧新渡戸記念館の建物について、コンクリートコアの圧縮強度試験を行い、使用可能であれば今後も資料保存展示のため使用すること、旧新渡戸記念館の建物を無償あるいは名目的な金額で譲渡する旨の契約を締結すること、収蔵資料を保存して展示を継続していくために必要となる市の支援方法について、調停(※5)を申し立てました。
 本件は、最高裁で確定した耐震診断の合理性等により、市では再度の耐震診断には応じられない等合意には至らず、令和2年7月8日に調停不調(※6)となりました。

 裁判で市の主張が認められた状況の中、再三の要請にも応じず、Aは旧新渡戸記念館を明渡すことがなく占有し続けていたことから、市ではやむを得ず令和2年8月11日、A及びBに対し、建物の明け渡し、かつ、連帯して、平成27年7月1日から明渡済みまで1か月金4万1,834円の割合による金銭を求め、青森地方裁判所十和田支部へ民事訴訟を提訴しました。
 訴訟において市では、明渡等について主張を行ってまいりましたが、①市が実施した耐震診断結果を前提とした改修工事(耐震上問題があり、部分的な耐震補強工事はできないので、例えば壁を取り替えるなどの大規模改修)等を条件とした建物譲与、②共同で、協議・協力による資料の所有権確定作業等により、資料の管理が適切に行われる環境が整う見込みとなったことから、令和5年12月6日、裁判所により民事調停法に基づく調停に付され、12月19日市議会での議決を経て、12月28日調停が成立しました。

 

※1 原告適格:行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消訴訟を提起できる者は、当該処分等につき法律上の利益を有する者(処分等の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分等の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限られていること。(行政事件訴訟法第9条第1項)
※2 却下:要件を備えていない不適法な訴えなどとして内容が審理される前に退けられること。
※3 原判決取消・差戻し:原判決を出した裁判所に審理のやり直しをさせること。
※4 棄却:内容が審理されたうえで訴えが退けられること。
※5 調停:裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、民事調停法に基づき話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続き。
※6 調停不調:調停委員会が、合意は見込めないとして調停を終了させる決定をすること。

 調停で合意した主な内容は次のとおりです。
① 市は、Bに対し現状のまま旧十和田市立新渡戸記念館(以下「本件建物」という。)を無償で譲渡するものとして、調停成立後、令和6年3月1日を譲与日とする建物譲与契約を締結する。

② A及びBは、本件建物について改修工事を実施して安全を確保した場合に限り、第三者を立ち入らせ、資料の展示・観覧に用いることができるものとし、当該改修工事を実施するに当たっては、平成27年に株式会社石川設計が実施した本件建物の耐震診断の結果を前提にして行う。

③ 本件建物内にある資料については、市とA及びBが共同で、相互に協議・協力して資料の所有権を確定する作業を行うものとし、市とA及びBがそれぞれ所有権を有するものを管理する。

④ 市は、その余の請求を放棄する。

 市が建物の明渡し等を求める民事訴訟の判決によらず、調停に合意することとした理由は、①A及びBが当市の実施した耐震診断の結果に基づく改修工事を行うことで安全性の確保が見込まれること、②裁判の継続による控訴上告、明渡しのための代執行等を回避することが可能であること、③懸案事項の一つであった資料の所有権確定作業を共同で、協議・協力して行うことを調停条項として合意できたためです。
 なお、この調停条項は、最終的に裁判所から示され、双方が自主的な義務履行に合意したものであることから、判決による解決よりも、双方にとって意義あるものと考えております。

 市では、調停条項に従いBと令和6年2月27日に建物譲与契約を締結し、同3月1日付けで旧記念館を譲与いたしました。
 また、公園内屋外トイレの給排水設備について旧記念館からの分離工事を行い、旧記念館譲与後も太素公園の利用がこれまでどおりできるよう周辺整備を行いました。

 改修工事については、平成27年に市が実施した耐震診断結果を前提として実施することとされており、安全が確保された場合に限り第三者を立ち入らせることができる旨を調停条項に定めております。
 令和6年6月28日市役所内で行ったBとの協議の場で、Bらより改修工事を実施した旨の発言があったところですが、詳細に係る説明はなかったことから、現在市ではその内容等について把握できていない状況となっております。
 市の見解といたしましては、改修工事の詳細及び市の実施した耐震診断結果を反映した安全性の確保が不明なことから、現時点では第三者の立入りはできないものと考えており、A及びBには、社会通念上、建物を譲渡した当事者である市に対して改修工事の詳細等の説明をする必要があることから、引き続き説明を求めてまいります。

 市では、令和6年2月15日、双方の代理人弁護士立ち合いのもと、A及びBに対し下記の事項について、伝達・依頼を行いました。

①現時点において、市役所庁舎内には、寄贈や購入による市の所有権を示す公文書等はなかったこと(A及びBが占有し続けているため、市は確認できていないが、旧新渡戸記念館にはある可能性あり)。②市又は太素顕彰会の所有物を示すリスト及び記念館だより等において寄贈購入が確認できるリストについて、A及びBの所有物が含まれていないか確認を求める。③旧記念館内において、資料目録又は上記リストによる資料現品確認作業を行わせること。④旧記念館内にある記念館運営に関する文書等の引渡し。

 このことを含めた調停に関する協議について、市は令和6年10月15日現在まで文書依頼を4回、市役所における対面での協議を1回行いましたが、市が求めている資料の現物確認等については、現在においても実施できておりません。

 市といたしましては、旧記念館の設置者であった市又は管理母体であった太素顕彰会が、寄贈を受けた、あるいは購入した資料として市が保有しているリストにある資料は、市又は太素顕彰会に所有権があるものと考えています。
 また、市では、旧記念館の開館当時、寄贈あるいは購入にかかる関連文書等は市役所内ではなく、旧記念館に保管されており、それ以外にも資料台帳等で所有経緯が確認できるものと考えていることから、これら関連文書と資料現品の確認を共同で行うことで確実に資料の所有権確認が行われるものと考えていることから、旧記念館内作業をA及びBに求めているものです。
 なお、市では令和6年6月11日の太素顕彰会総会において、これまでの一連の経緯を説明させていただいたところ、太素顕彰会が所有する資料については、市へ寄贈する旨の決議が行われたことから、整理した資料リストに漏れ等がないか万全を期すためにも、旧記念館内での作業が必要なものと考えています。

旧十和田市立新渡戸記念館に係る訴訟等経緯

年月日 概要
平成27年6月26日 市議会において十和田市立新渡戸記念館廃止条例議決
平成27年6月30日 A、条例廃止処分取消請求事件を提訴【青森地裁】(以降 口頭弁論7回)
平成29年1月27日

Aの訴えを却下【青森地裁】

Aには訴える資格がない(訴えが不適法)として、訴えを却下。

平成29年1月30日 A、控訴【仙台高裁】(以降 口頭弁論1回)
平成29年6月23日

原判決取消し、差戻し【仙台高裁】

Aには訴える資格がある(訴えは適法)であるとして、青森地裁却下判決を取消し、青森地裁では判断されていない廃止条例の制定行為の違法性について、更に審理を尽くして判断するよう青森地裁に差し戻す。
〇市としては、耐震診断が適正に行われたかどうか、記念館の廃止が違法かどうかを、訴訟の中で明らかにしたほうが、市民にとっても分かりやすく、多くの方が納得するものとして、差し戻し審に対応することとした。

平成29年10月18日 差し戻し審開始【青森地裁】(以降 口頭弁論6回)
平成30年11月2日

Aの請求を棄却【青森地裁】

①廃止条例の制定行為に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。②建物の耐震性能に問題があり入館者等の安全を確保できないという重大な事態に直面し、建物を取り壊すほかなかった。③被告の財政状況や政策目的も踏まえれば、記念館の廃止という判断もやむをえない。④原告に与える不利益も大きなものということはできない。

平成30年11月12日

A、控訴【仙台高裁】(以降 口頭弁論2回、和解協議2回)

令和元年7月10日

Aの控訴を棄却【仙台高裁】

記念館の廃止には合理的理由が認められる。
《判決で示された内容》
①コンクリート強度の再試験は必要ないこと。②耐震診断が適切に行われていること。

令和元年7月23日 A、上告【最高裁】
令和元年12月3日 上告棄却【最高裁】
十和田市立新渡戸記念館の廃止が確定
令和2年1月20日 A、調停申立て【十和田簡裁】(調停期日1回)
記念館の建物について、コンクリートコアの圧縮強度試験を行い、使用可能であれば今後も資料保存展示のため使用する等の申し入れ。
令和2年7月8日 市側応じず、調停不調終了。
令和2年7月29日 市議会において訴えの提起議決
A及びBに対し、建物の明渡し及び明渡しまでの賃料相当額を求める。
令和2年8月11日

市、建物明渡等請求事件を提訴【青森地裁十和田支部】
(以降 口頭弁論2回、非公開で行われる進行協議及び弁論準備手続がそれぞれ2回及び18回)

令和5年12月6日 付調停【青森地裁十和田支部】
令和5年12月28日 調停成立

 

調停後の市の対応

年月日 概要
令和6年1月22日 市、Bへ建物譲与に関連する手続きの説明。
令和6年2月15日 市、A及びBへ資料所有権確定作業の申し入れ。
①市及び太素顕彰会所有リスト(仮)の確認。②館内資料現品の確認作業。③館内資料に関する文書等の引渡し。
令和6年2月27日 市とBにおいて、建物譲与契約を締結。
令和6年3月1日 旧十和田市立新渡戸記念館をBへ譲与
令和6年5月28日 市、文書により2/15依頼の回答を求める。
令和6年6月28日 市、Bらと市役所内で協議。
令和6年7月17日 市、文書によりA及びB代理人弁護士等の詳細について、回答を求める。
令和6年8月19日

市、文書によりA及びBへ下記内容の回答を求める。
⑴ 新渡戸記念館ホームページ掲載記事について

① 新渡戸記念館ホームページ管理運営への貴殿の関わり。② 新渡戸記念館ボランティア団体代表名で掲載された記事へのA及びBの関わり。
⑵ 改修工事及び第三者の立ち入りについて
① 令和6年6月28日までにA及びBが実施した改修工事の内容。② ①改修工事が前提とした平成27年に市が実施した耐震診断結果(以下「本件耐震診断」)項目及び同項目の改善状況。③ 本件耐震診断に追加して実施した構造検討の有無。④ 調停成立後から①改修工事終了時までに、建物内へ立ち入らせた第三者の状況。⑤ ①改修工事後に、建物内へ立ち入らせた第三者の状況。⑥ 上記④⑤がない場合は、入館者の受け入れ予定時期。
⑶ 本件耐震診断について
①「コンクリート材料調査」の実施者(依頼者)、実施した理由及び結果詳細。②「コンクリート材料調査」が別の耐震診断ではない場合、①改修工事上の位置づけ。③「市の委託業者による耐震診断に関する問題点が複数確認され た」とする新聞記事についてのA及びBの取材応対の有無。④ 上記③において、A及びBが取材対応していない場合、本件耐震診断の結果を否定する内容への抗議及び記事訂正の申入れの有無。⑤ 本件耐震診断結果に関するA及びBの見解。

令和6年10月15日

市、文書により、市主張の法的根拠を明示の上、A及びBへ下記内容の回答を求める。

① 令和6年10月30日(水)から11月1日(金)までの3日間において、旧記念館内の資料現品及び関連文書等の確認作業を市に行わせること。対応できない場合は、11月15日(金)までにおいて、3日間を示すこと。
② 旧記念館の供用開始日である昭和40年4月1日以降収集(寄贈・購入等)され、旧記念館において所蔵・管理されていた資料等のうち、A及びBが所有権を主張するものについて、その目録(資料等の名称、数量等の一覧)とA及びBの所有権の法的根拠を明示すること。
③ 令和6年8月19日付け照会別紙照会事項⑵及び⑶に回答すること。

※市の照会に対するA及びBの回答については、現時点で了承が得られていないため、掲載しておりません。

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